あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
「精霊石は手に入りましたが、巫女姫を失ったフローは、これ以上精霊石に力を貯めることができない。……でも、まあ、そうなってしまったものは仕方ない。私は精霊石に残った力を使って、この国の鉱物を金へと変えました。人間たちは、それはもう群がって。おいしかったですね。彼らの欲は」

 人をなんとも思っていないような発言に、気持ちが悪くなってくる。

「とはいえ、精霊石の力は使い切ってしまったので、この国に用はなくなってしまった。私は王から離れることにしました。その時に、この体の主と出会ったのです。彼の望みは健康な体でしたからね。私が憑いている間は死ぬことが無いのですから、ウィンウィンでしょう」

 そうして、財政と失った信用を立て直すのに必死な王家を横目に、ベリトはドウェイン王子の見た目を変え、他国へと渡った。

「王は、不在となった王子には影武者を立てたようですね。まあ、自身が悪魔と契約したことを知られるわけにはいかなかったのでしょう。まあ結局、レッドメイン王国の軍によって、公国は滅びたわけですが」

 カーティス卿の口端が吊り上がる。人間とは思えない、ゆがんだ表情だ。

「そうしてフローライトの精霊石は、おもちゃ箱に入れていたんですがね。いつの間にか力を取り戻しているじゃありませんか。……うれしい誤算でした。まだまだこれで楽しめる。あなたのおかげですね。新しい巫女姫」

 カーティスの発言が怖いのと同時に、守ろうとするルークが強く抱きしめてくるので息苦しい。

(いや、守ろうとしてくれてるのはありがたいけど! これはやりすぎ)

「さあ、いくらでもフローに力を与えてください。私はその力を吸い取って、さらに強い存在になれる。ほら!」

 次の瞬間、アメリはうまく呼吸ができなくなった。

「……なっ……」

 次に襲ってきたのは脱力感だ。体中の水分を搾り取られたようなそんな感覚がして、立っていられなくなる。

「ふ、フロー」
《ごめ……、アメリ。僕の力もとられた》

 かすれて弱い、フローの声。アメリも、どんどん吸い取られていく感覚がある。

「アメリ!」

 ルークの声が、だんだん遠くなっていき、同時に視界が真っ暗になる。

(なにもできなかった。……フローを助けるって言ったのに……)

 悔しくて唇を噛み締めた。だけどそれも一瞬で、すぐに全身から力が抜けてしまった。
< 130 / 161 >

この作品をシェア

pagetop