あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
ゆらゆらして、まるで水の中をたゆたっているような感覚だった。
《ごめんね、アメリ》
フローが悲しんでいる。
なにを謝っているんだろう。フローが謝ることなんてないのに。触れて、大丈夫だよって言ってあげたい。
でも、手を伸ばそうとしても動かない。
(あれ、なんで。ていうか、手を掴まれてる。え? 誰?)
「……!」
「アメリ! 目が覚めたか?」
視界いっぱいに、心配そうな表情のルークがいる。
「ルーク、さ……ま?」
「倒れたんだ。覚えているか?」
「え……」
周囲を見渡し、自分が知らない部屋のベッドで寝ていることがわかった。同時に、テンバートン侯爵の夜会で起きたことを思い出す。
「ルーク様、フローは」
「心配ない。ただ、疲れて眠っているようだ」
「そう、ですか」
ちらりと見るとベッドサイドにフローライトのネックレスが置かれている。
フローの光は淡く消えてしまいそうに儚い。
(声も聞こえてこない……)
心配で悲しくなってくる。
目尻に涙が浮かんだのを、ルークは見逃さなかった。節くれだった固い指が、アメリの目尻をそっとなぞる。
「泣くな」
「うっ……はい」
仰向けになって、息を吐く。どうやらどこかの家の客間らしい。空気が洗浄で、知らない場所なのに落ち着く。
「ここどこですか?」
「俺の屋敷だ」
奥の方から声が聞こえて、ルークの背中越しに見やると、そこにはジャイルズ伯爵がいた。
「ジャイルズ伯爵様」
「城に戻るより早い方がいいだろうと思って、とりあえずロバートの屋敷に連れてきた」
どうやらジャイルズ伯爵の屋敷は、テンバートン侯爵の屋敷からそれほど離れていないらしい。