あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
「アメリ、カーティス卿になにをされた? どうして急に意識を失ったんだ?」
「なんか、力を吸い取られるような感覚がありました。というか、ルーク様には見えましたか? フローの力が、カーティス卿の指輪に吸い込まれていくのを」
「ああ。黒い指輪だよな。おそらくあれが精霊石なんだろう。見た目を変えられているんだ」
「私も、そう思います」
「あれを取り戻すにはあいつの腕ごと斬らなきゃいけないかもな」

 言うことが物騒だ。これだから武闘派は。

「ベリトは精霊石を介して、フローの力を奪うことができるようです。そしてフローは、私から力をもらっているので、あまりにもごっそり奪われた結果、私まで消耗してしまったんでしょう。ルーク様は大丈夫ですか?」
「俺は平気だ。レッドメイン王国の王族は防護の魔法に長けている。三年前、戦争に向かう前にかけてもらった守護の魔法が、まだ効いているのだろう」
「フローにとってのパペットのようなものですね」

 フローも、パペットの中にいる時は魔力を奪われにくいと言っていた。

「であれば、次にベリトと対峙するときには、フローにはパペットに入っていてもらえばいいんですね!」
「そうだな。ただ、君の方に影響がないかどうかはわからない。できれば次にベリトに会うときは、アメリはいない方が……」
「嫌です!」

 アメリはきっぱりと言った。

「フローとルーク様が、国を守ろうとしているんですから、私も力になりたいです」
「だが、君にそんな負担はかけられない」
「どうしてですか?」
「恨んでいるんじゃないのか? 母親を奪ったこの国を。王族だと公表したくないと言っていたじゃないか」

 あまりに真剣な表情に、アメリは思わず笑ってしまう。
 ルークこそ、そんなに責任を感じることはないのに。だって彼にとっては生まれた国というわけでもない。ただ、なし崩し的に管理を任されただけの国だ。
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