処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました
「……私は、この国が好きかと言われればわかりません。だけど、フローライトは綺麗だと思うし、フローのことも好きです。そして、この国のために頑張ってくれているルーク様の力にもなりたいって思っています。私は、あなたとフローの力になりたい。大好きな人たちに報いたいんですよ」
ルークはほっとしたような、少し泣きそうな表情になっていた。
「俺も、この国を守りたい理由が増えた。これまでは、いつか誰かに国を受け継ぐときに、できるだけいい国にしておきたいと思って頑張って来た。だが今は……」
「今は?」
「君とフローが幸せそうに笑える国にしたい」
「ルーク様」
熱い視線に、胸が高鳴りだす。
「アメリ……、俺は、君を……」
心音がうるさい。ルークの瞳に吸い込まれてしまいそうだ。
ルークの顔が近づいてくるのを、ぼうっと見ていたら、突然、ノックの音が響いた。
「ルーク様、病み上がりのご令嬢をあまり長くつき合わせるのはよくありませんわ」
マルヴィナの声だ。慌てて体を離したが、ドキドキだけは止まらない。
「ああ。わかっている」
ルークはすぐ返事をすると、外套を着こんだ。
「アメリは、ここに泊めてもらうといい」
「え? 私も帰ります」
「無理はするな。明日、ロバートと一緒に戻ってくればいい」
「でも……」
なんとなく、ルークと離れたくなかった。不安だし、心配でもある。
「もしルーク様になにかあったら……」
「俺は大丈夫だ。守護魔法が効いているようだし、物理で戦ったならば、あんななまった体つきの奴に負けるとは思えないからな」
カラカラと笑いながら、ルークは言う。だけど、アメリの胸はモヤモヤしたままだ。離れることが心細い。
(……いや、違うかも。これは寂しいのかも)