あなたがお探しの巫女姫、実は私です。

あなたを助けられるなら


 目覚めたとき、アメリは見慣れない部屋に驚き飛び起きた。

「あ、そうだ。ジャイルズ伯爵のお宅だった!」

 周囲をきょろきょろと見渡し、「フロー、いないの?」と声をかける。しかしフローは現れない。
 よく見れば、昨日はナイトテーブルの上に合ったフローライトのネックレスも無くなっていた。

(ルーク様が持って行ったのかしら)

 とりあえず誰かを呼ぼうと立ち上がると、扉がうっすら開いているのに気づいた。

(……ん?)
「しー。駄目だよ。母様に怒られる」
「でも、きになるもん」

 子供の声がする。近づくと、気づいたのか「わっ、わっ」と言いながら逃げようとしていた。

「みーつけた!」

 扉を開けながらそう言えば、そこには尻もちをついた女の子と、その子を起こそうと奮闘している男の子がいた。

(わあ、かわいい)
「おねえちゃんがおきゃくさま?」

 くりっとした目がかわいらしい女の子だ。好奇心いっぱいとばかりに目を輝かせ、アメリを覗き込んでくる。男の子の方がお兄さんのようで、かしこまった様子で頭を下げた。

「ごめんなさい。起こしてしまって。僕、ノアと言います」
「わたし、リサ!」
「私はアメリよ。おはようございます。……ジャイルズ伯爵のお子さんかしら」
「うん!」

 リサが元気よく答えたと同時に「こらっ」とかわいらしい声が聞こえてきた。

「リサ、ノア、あなた達なにをしているの!」
「母様!」
「おきゃくさまにごあいさつだもん」

 やばいという顔をしたノアに対し、リサは果敢に母親に向かっていった。

「おはようございます、ジャイルズ夫人。こんな格好ですみません」
「ごめんなさいね、アメリさん。朝から子供たちが失礼を」
「いいえ。こちらこそ、ご迷惑をお掛けしました」
「いいのよ。私、ロバート様から聞いて、ずっとあなたに会ってみたかったの。着替えたら朝食をご一緒にいかがかしら」
「はい、ぜひ」
「リサはぁ?」
「子供たちは子供部屋でよ」

 リサは夫人に抱っこをせがむが、お腹が大きいため断られていた。ノアがリサの手を繋いで、「我慢しなよ」と言っている。
 兄妹関係が微笑ましい。

(いいな。私には兄弟がいないから、なんか羨ましい)

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