あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
《ルーク》

 声がして、ルークは顔を上げる。ふわりと浮いている光の球は、フローだ。
 昨晩、アメリと同様に力を失って倒れた彼を、ルークは城まで連れて帰った。消耗しているアメリのそばよりも、パペットの中に戻した方が、少なくともこれ以上の力の流出は防げると考えたからだ。
 城に戻ったフローはふらふらになりながらもアメリの部屋へ戻っていった。おそらくはパペットの中に戻ったのだろう。

「動き回れるようになったのか? どうだ調子は」
《あんまりよくない。でも、アメリのことが気になるから、話を聞きに来た》
「昨日はロバートの屋敷に置いてきたんだ。回復していれば一緒に来るだろう。心配はいらない」
《そう。ならいいけど》

 フローは安心したようにルークの腕に止まった。

《ねぇルーク。僕、消えた方がいいのかな》
「消えられたら困る。この国を守る精霊はお前だろう」
《でも、せっかくルークとアメリに力をもらっても、すぐにベリトに奪われる。僕だけならまだしも、アメリまで……。フローライトが採れなくなって十年。国民もみんなフローライトをいらないと思い始めている。僕は、アメリを犠牲にしてまで、存在していていいのかなって思ったんだ》

 フローの声が不安そうだ。それは、ルークにもわかる気がした。
 たしかにここに存在しているのに、必要とはされない。すると自分の存在がとても軽く、価値のないものに思えてくる。
 レッドメイン王国で、ルークはその感覚をずっと味わってきた。

「お前は必要だ。消えたりしたらアメリが泣くだろう」
《でも、……僕は昨日、アメリの力を倒れるまで奪ってしまったんだ。もう嫌だって思われたかもしれない》
「……お前も消されないために、必死だったんだろう? 仕方ない」
《アメリを、失いたくないよ》

 それはルークも同じだ。
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