あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
「逃げたぞ。追え」

 テンバートン侯爵が言い、他の貴族議員が追う。
 ルークは議席の机を盾にするようにしながら議場を走り回った。

「やれやれ。王ともあろう方が無様に逃げ回るとは。やはりルーク様には、王の資質がないかもしれませんね。皆様」

 にっこりといやらしい微笑みをカーヴェル卿が浮かべた。

「そうだ。王には、巫女姫の器であるカーヴェル卿こそがふさわしい!」

 騒ぎ出す議員たちの影から、ロバートが抜け出すのを見て、ルークはほっと息を吐いた。

* * *

 ルークに追い出されてしまったので、アメリは一度部屋に戻った。
 これ以上意地を張って仕事をしていても、ルークに怒られそうだ。

「フロー、いる?」

 ベッドの上にパペットが置かれている。
 アメリが入って来たことに気づいたのか、パペットはふわりと浮き上がって近づいて来た。

《アメリ、大丈夫かい? 昨日はごめん。君を守ってあげられなかった》
「やあね。そんなの私も一緒よ。フローこそ、ずいぶん力を取られちゃったんでしょう? 大丈夫?」
《なんとか? ルークが昨日のうちにパペットに戻してくれたから助かった》

 やっぱりそうだったのだ。アメリはルークの機転に感謝した。

「ねぇ。昨日のことなんだけど、カーヴェル卿のあの指輪」
《ああ。あそこに力が吸い込まれていったよね。あれが精霊石だろうね》

 フローが言うなら、もう間違いないだろう。

「でも色が黒かったよ?」
《ベリトの力で呪いがかけられているんだろう。フローライトが採掘すると石になってしまうのは、あれのせいだと思う》
「どうやったら解けるのかしら……」

 フローとアメリはふたりで考え込む。

「精霊石は、フローライトなのよね?」
《うん。基本の性質は変わっていないはずだよ。今は、僕が力を吸い出すことができなくなってる。かつては双方向に行き来できた力が、こっちからとられるだけになっているって言えば伝わる?》
「うん。わかるわ」
< 149 / 161 >

この作品をシェア

pagetop