あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
《最悪、精霊石を壊してしまえばいいとは思うんだ。今はルークとアメリがいる。僕が消えないだけの力はふたりからもらえるし、黒ずんだ精霊石はおそらく呪いの核となってしまっているみたいだから》
「そっか。壊す……。でもなぁ。カーヴェル卿の指についているものを奪うのは結構大変そうだよね」

 しばらく黙って考えていたアメリは、やがてひとつの考えを思いついた。

「ねぇ、フローライトとしての性質が残っているというなら、こういうのはどう?」

 アメリの言葉に、フローもうれしいのか光が強くなっていく。

《試してみる価値がありそうだ》
「だよね。ルーク様にも伝えに行きましょう。議会が終わったら執務室に来るはずだから、待っていればいいわ」

 ついでに本でも読ませてもらおう。カールが留守番で、いつも部屋にいるはずだから、入れてもらえないということもないはずだ。
 フローにパペットに入ってもらい、アメリはそれをポケットに入れて部屋を出る。

* * *

 廊下を歩いていると、慌てて執務室から出てくるジャイルズ伯爵の姿が見えた。手にはなぜかルークの剣を持っている。

「ジャイルズ伯爵様?」
「アメリ。大変なんだ。ルーク様が」
「え?」

 ジャイルズ伯爵から話を聞き、ルークが議員たちに追い詰められていることを知ったアメリは焦った。

「私も行きます!」
「いや、アメリは危ないから」
「大丈夫です。私もルーク様を助けたいもの」
「……わかった。こっちだ」

 ふたりは走って議場に向かう。アメリは初めて入る場所だった。
 ホールかと思うくらい広い部屋で、形はなだらかな漏斗状だ。座席が階段状に並んでいて、発言席が一番下にある。

「ルーク様!」

 その発言席のあたりで、ルークが大勢の貴族議員に腕を掴まれ、押さえつけられている。
 褐色の肌のカーヴェル卿が、微笑んだままルークに詰め寄っていた。

「さあ、皆さんはどう思われますか? ルーク殿と巫女姫の器である私、どちらがこの国の王にふさわしいですか?」
「もちろん、カーヴェル卿だ」
「そうだ!そうだ!」

 騒ぐ貴族議員に、ジャイルズ伯爵はあきれた様子だ。
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