処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました
「俺は無事だ。フローも、落ち込んでいるけど元気だ」
「え?」

 ルークの視線の先では、羽根のついた少年の姿のフローが、膝を抱えていじけている。

「フロー」
《ごめんアメリ。僕、またやっちゃったよ》
「大丈夫よ。フロー、こっちに来て。その可愛い姿、ちゃんと見せてよ」

 唇を引き結んで、情けなく眉を寄せたフローは、フラフラと近づいてくる。

《怒ってない? アメリ》
「全然? フローが無事でよかったわ」

 フローの顔に安堵の表情が広がる。声だけなら伝わり切らない彼の気持ちが、今は手に取るようにわかった。

《ベリトはもう封印したからもう大丈夫。精霊石は壊れちゃったけど、これからまた新しいのを作ればいいから平気だよ。しばらくはルークとアメリがいるし》
「そう。良かった」

 ほっとして笑うと、ルークが話に混ざってくる。

「フローがベリトを封印してくれたのはわかったんだが、指輪に炎を浴びせて、なぜフローにかけられていた呪いは解けたんだ?」

 どうも納得のいっていない表情だ。

「ああ、それはですね……」

 今度はアメリが説明する番だ。
 フローライトには、熱せられるとはじけて強く発光するという性質がある。成分が変わるわけではなく、鉱石になるときに出来上がった変なひずみが、熱によって修正されるときにエネルギーが放出するかららしい。

「今、フローが存在するだけなら、精霊石は無くてもいい。フローが弱っているのも、精霊石を通じてベリトに力を奪われ続けているからです。だからいっそ、壊してしまえばいいと思ったんです」

 とはいえ、鉱石を壊すのは難しい。しかし、フローライトの性質を使えば、はじけて割ることができるのではないかと思ったのだ。

「そのためには精霊石を熱しなきゃならなくて、だからルーク様に魔法剣を使ってもらったのです。ルーク様がいなければ成功しませんでした」
「……そうか」

 ルークもどことなくうれしそうで、アメリもうれしくなる。
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