処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました

「マルヴィナ様のこと、よく分っておられるのですね」
「幼馴染だからな……って、なにを怒っているんだ!」

 いつの間にかアメリがそっぽを向いているのに気づいて、ルークが焦りだす。

「怒ってなんかいません」
「嘘をつけ!」

 ふくれっ面のままでいると、静かに手を重ねられる。

「好きなのは……お前だけだ」

 小さなつぶやきに慰められて、アメリは手を握り返す。
 うれしそうに微笑むルークに見とれているうちに、優しいキスが落とされて。ふたりは簡単に仲直りしてしまうのだ。

「では、マルヴィナ様にお知恵を借りてみましょうか」

 ふたりはロバートを呼び出し、マルヴィナに取り次いでもらうことにした。

 数日後、アメリとルークは、そろってジャイルズ伯爵邸を訪れた。

「……というわけなんだ。マルヴィナ、なにかいい考えはないか?」

 お腹の大きなマルヴィナは、ソファの背もたれに背中を預けたまま微笑んだ。

「まあ。ルーク様ともあろうお方がそんなことで悩んでらっしゃるの?」
「民の反感を買うわけにもいくまい」

 渋い顔をしたルークを、それはそれは楽しそうに眺めている。

「簡単ですわ。すでに既成事実があると伝えればよろしいのよ。純潔を失っても、フローライトには変化が無いとわかれば、それ以上の反対などなさらないでしょう?」
「なっ……」

 顔を真っ赤にするルークに、マルヴィナは目をすがめ「まだですのね……」とつぶやく。

「まったく、いい年をした男性が、恋愛せずに生きてくるからそんな奥手になるんですわ。ねっ、アメリ様」
「い、いえ、私は」

 アメリも顔が真っ赤だ。

「あら、こちらも同様ですのね」

マルヴィナはややあきれた様子だ。
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