処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました
三年前、無くしたと思っていたそのパペットを見つけたとき、アメリは初めてフローの声を聞いた。以来、ずっと一緒にいて、とあるものを探し続けている。
《ルークの雑用係に慣れたのはラッキーだな。これで、〝精霊石〟を探しやすくなる》
「それなんだけど、あれは一応宝石だったわけじゃない。もう売られたりしているんじゃないの?」
《あれを売るほど、前公王が愚かではないと信じたいよ》
パペットの小さな手が、腕組みをするように交差している。
「捜すのはいいんだけど、ルーク様の部屋で不審な行動をされるのは困るわ。見つかったら罰せられちゃうもの」
《それは駄目だけど。見つからないように気を付けるよ》
「頼むわよ。……ねぇ、精霊石を取り戻せれば、またフローライトが採れるようになるのよね?」
《そうだよ。国が滅びちゃう前になんとかしないとね》
フローは開国以来、この国とともにあるらしい。初代の巫女姫と心を通わせ、フローライト鉱山を守り続けている精霊だ。精霊石とは、純度の高いフローライトで、精霊の力を濃縮して詰め込んだものだという。
精霊は万物に宿り、自然の力と人の想いを糧として生きる。巫女姫は人の想いをエネルギーに替え、精霊に与えてくれる存在なのだそうだ。
巫女姫がいない時代は、フローは思うように力を発揮できない。そのときに困らないよう、フローは精霊石に力をため込んでいたらしい。
巫女姫も精霊石もない今のフローは、自分が消えないようにするのがやっとらしく、パペットに憑いているのも、その方が力の消耗が押さえられるからだと言っている。
「まあ、国のことはどうでもいいけど、フローが消えるのは嫌だから、ちゃんと協力するわ」
フローと出会えたおかげで、アメリは今生きているのだ。だからフローのお願いは聞いてあげたいとは思っている。
アメリが、巫女姫の娘だと知っている人間は、現在ではメイド長だけだ。
彼女は、母が幽閉されていた頃のお世話係で、赤ん坊だったアメリの面倒を見てくれた人だ。
『アメリは、ローズマリー様の分も幸せになってちょうだい』
王族だと知られぬように、平民として生きてほしいとマーサは言った。アメリも、そうありたいと思っている。
だから絶対に、ルークに巫女姫の忘れ形見だと知られてはならないのだ。
(なのに、おそばで仕えることになるなんて……)
運命のいたずらとはこのことだろうか。
こんなことになるなら、あのとき、フローがなんと言っても城に戻るべきではなかったのかもしれない。
アメリはぼんやりと、フローと再会した日のことを思い出していた。
《ルークの雑用係に慣れたのはラッキーだな。これで、〝精霊石〟を探しやすくなる》
「それなんだけど、あれは一応宝石だったわけじゃない。もう売られたりしているんじゃないの?」
《あれを売るほど、前公王が愚かではないと信じたいよ》
パペットの小さな手が、腕組みをするように交差している。
「捜すのはいいんだけど、ルーク様の部屋で不審な行動をされるのは困るわ。見つかったら罰せられちゃうもの」
《それは駄目だけど。見つからないように気を付けるよ》
「頼むわよ。……ねぇ、精霊石を取り戻せれば、またフローライトが採れるようになるのよね?」
《そうだよ。国が滅びちゃう前になんとかしないとね》
フローは開国以来、この国とともにあるらしい。初代の巫女姫と心を通わせ、フローライト鉱山を守り続けている精霊だ。精霊石とは、純度の高いフローライトで、精霊の力を濃縮して詰め込んだものだという。
精霊は万物に宿り、自然の力と人の想いを糧として生きる。巫女姫は人の想いをエネルギーに替え、精霊に与えてくれる存在なのだそうだ。
巫女姫がいない時代は、フローは思うように力を発揮できない。そのときに困らないよう、フローは精霊石に力をため込んでいたらしい。
巫女姫も精霊石もない今のフローは、自分が消えないようにするのがやっとらしく、パペットに憑いているのも、その方が力の消耗が押さえられるからだと言っている。
「まあ、国のことはどうでもいいけど、フローが消えるのは嫌だから、ちゃんと協力するわ」
フローと出会えたおかげで、アメリは今生きているのだ。だからフローのお願いは聞いてあげたいとは思っている。
アメリが、巫女姫の娘だと知っている人間は、現在ではメイド長だけだ。
彼女は、母が幽閉されていた頃のお世話係で、赤ん坊だったアメリの面倒を見てくれた人だ。
『アメリは、ローズマリー様の分も幸せになってちょうだい』
王族だと知られぬように、平民として生きてほしいとマーサは言った。アメリも、そうありたいと思っている。
だから絶対に、ルークに巫女姫の忘れ形見だと知られてはならないのだ。
(なのに、おそばで仕えることになるなんて……)
運命のいたずらとはこのことだろうか。
こんなことになるなら、あのとき、フローがなんと言っても城に戻るべきではなかったのかもしれない。
アメリはぼんやりと、フローと再会した日のことを思い出していた。