処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました
 七時前にルークの執務室へと向かうと、扉の前でジャイルズ伯爵が待っていた。

「おはようございます」
「来たか。おはよう、アメリ」

 ジャイルズ伯爵は少し眠そうだ。彼は城に住み込んでいるわけではなく、王都にある屋敷から出勤してきているらしい。

「まずは予定の確認をしよう。中に入ってくれ」
「はい」

 執務室にはまだ誰もいなかった。

「今週は議会があるので、午前はずっと大会議場にいる。午後は執務室で政務か、騎士団に訓練に行くかだな。遠出の予定は今のところない」
「はい」

 アメリはポケットから紙を取り出し、簡単にメモを取る。慣れれば暗記できるのかもしれないが、新しいことは覚えるまでに時間がかかる。ミスをするよりは、メモを取った方が安全だ。

「メモを取る習慣があるのはいいことだな」

 ジャイルズ伯爵もにっこり笑い、アメリがメモを取り終えるのを待ってくれた。

「今、閣下は鍛錬をしておられる。早朝から体を動かすのが日課だ。戻った後は朝食、それ以降執務という流れになる」
「さっき、散歩をしていたら見ました。ルーク様は早起きなんですね」
「ああ。いつ寝てるんだか私にはさっぱりわからないな。もっと隙を見せてくれてもいいのにと思うが、あの方は昔からああだ」

 おや、とアメリは思う。てっきり褒めそやすものだと思っていたのに、ジャイルズ伯爵は不満そうだ。

「で、まず君の最初の仕事は、ルーク様の今日の衣服を選んでもらうことだな」

 昨日もそんなようなことを言っていた。ルークに選ばせるとシンプルすぎるから、と。

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