あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
「この国の特産品です。今は数が少なくなってきているので、逆に希少価値があると思います。議会には、古くからのボーフォート貴族も出席なさるでしょう? フローライトを自ら身に着けるということは、この国を理解しようという気持ちの表れにも感じられます。鉱物としての価値は金などに比べれば劣りますが、この国はフローライトで財を築いた国ですもの」

 アメリはいい考えだと思ったが、ジャイルズ伯爵は難色を示した。

「その発想はいいと思うが、少し地味だな」
「確かに、圧倒的富裕者の印象はないですが、フローライトの特徴は、色の豊富さにあります。ちょうどルーク様がお持ちのこの濃紺の上着に合わせれば、とても品よく見えると思いますよ」

 ジャケットの上にブローチを当ててみる。すると、どこからともなくルークの声がした。

「いいことを言うな」

 アメリは、驚きでひゅっと息を飲んだ。
 見ると、続き間の扉の方から、ガウン姿のルークが、タオルで髪を撫でつけながら近づいてくる。
 〝水もしたたるいい男〟という言葉をどこかで聞いたことがあるが、まさにそれだ。濡れているだけで妙な色気が発生している。

「ル、ルーク様っ」

 アメリは顔が赤くなるのを止められない。だって無理だ。ルークが特別とかではなく、アメリは男性全般に慣れていない。ましてそんな格好の美形の男がそばにいて、動揺しないわけがないではなにか。

「汗を流してきただけだ。じろじろ見るな」
「す、すみませんっ」

 謝ってはみたが、自分が悪いわけではないとアメリは思う。

(そんな格好で人前に出るルーク様が悪いのよ……!)

「閣下、女性の前になんて格好で出てくるんですか? 鍛錬は終えたんですね。朝食は?」

 ジャイルズ伯爵が割って入る。

「まだだ。着替えるから、運ばせろ。服はお前が選んだものでいい」

 どこから話を聞いていたのか、ルークはアメリが手に持っている服を指差して言う。

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