処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました
「も、申し訳ありません。おふたりの言い合いが、……なんというか、おもしろくて」

 弁明しようとして弁明にもなっていないことに気づき、それにもおかしくなってくる。

(だ、駄目だ)
「ご、めんなさい。でも、ふ、あはっ、あはは」

 ついにアメリは笑いを堪えられなくなってしまった。
 こうなると、自分でも不思議になるが笑いが止められない。やばいやばいと心の中では思っているのに、真剣そうなルークの顔を見て、またおかしくなってくる。

「お前は、……度胸があるな」

 あきれたようにルークが言う。

「す、すみません」

 ようやく発作のような笑いが収まると、さすがのアメリも焦ってくる。
 怒られるだろうと、とりあえず背筋を伸ばして罵声を受け止める準備をするも、ルークはその後、まるでアメリの発作がうつったかのように笑い出した。

「くっ……くっ、そこで笑うか? ああ駄目だ。おかしい。変な奴だな、お前」
「え、褒められてます?」
「褒めてはない」

 調子に乗るとすぐに落とされる。まあでも、笑ってもらえたのはちょっとうれしいかもしれない。

「さあ、議会だな。いくぞ、ロバート」
「はっ。アメリ、閣下の不在中は、私室の清掃やベッドメイクを頼む」
「はいっ」

 気合を入れて答え、アメリはメイク道具を片付ける。その間に、ふたりはあわただしく出て行った。

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