処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました
* * *

《……すごいな、いろんな精霊が来てる》

 フローのつぶやきは、一心不乱に働くアメリには聞こえてなかった。
 精霊は万物に宿る。そして、物を大切にしてくれる人の想いを糧に、力をつけていくのだ。
 今も、アメリに掃除をされることで、テーブルの材料だったオークの精や花瓶に飾られた花の精たちが集まって喜んでいるのがフローには伝わって来た。

《平和だなぁ。……昔はこんなだったのになぁ》

 この国の民はフローライトのおかげで潤っていたから、フローはいつだってあふれるくらいの力をもらえていた。
 その力を返す意味で、この国を守護しようと決めたのだ。
 その中で魔力の強かった王の娘と話ができるようになり、フローはますますこの国が好きになった。
 それから、何年も何百年も、フローはこの国と共に過ごしてきたのだ。多くの巫女姫と出会い、見守って、そして見送った。
 魔力の強い巫女姫は、フローが弱った時には力を分けてくれた。

《僕が今も消えずにいられるのは、アメリが僕に力をわけてくれているからだ》

 フローは室内を飛び回りながら、アメリの言いつけを守って気配だけで精霊石を探る。
 フローライトの気配は感じるものの、それは壁に埋め込まれた装飾だったり、望遠鏡のレンズだったりで、精霊石ではない。

(ここ、元公王の部屋でいいんだよな。絶対ここにあると思ったのに……)
《いったいどこにいったんだろう、精霊石》

 フローはせわしなく動き回るアメリを見ながら独りごちた。
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