あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
「ルーク様は他国出身ですからご存じないのですわ。フローライトは巫女姫がいるからこそ採れるのですわよ? 巫女姫は精霊に愛されているのですから。でも先代の巫女姫は失踪……精霊を裏切ったのです。だから精霊はお怒りになったんでしょう。次の巫女姫を待つことももうできません。王家の血筋はもういないのですから」

 きっぱりと言い切るフェリシアに、ルークはあきれた視線を向ける。

「以前にも、古参貴族からそんな話を聞いたことはある。王族からしか巫女姫が産まれないという話は、まあいいだろう。しかし、巫女姫がいなければフローライトが採掘できないというのは納得がいかない」

 毅然と反論しているところを見ると、昨日のアメリの話は信じてくれているのだろう。

「信じてもらえないなら仕方ありませんわね。まあでも、もうフローライトは採れません。これは絶対です。その代わりとなる可能性があるのは金ですわ」
「金だと? 以前にも金鉱脈を探したが、大した成果が出なかったのではないのか?」

 ルークが眉を寄せる。

「まだ内密のお話ですけれど、わが領で、新たな金鉱脈が見つかったんですの。次々採れておりますのよ?」
「まさか」
「本当です。お父様が支援している商人が見つけたんですの。細工師も手配して、わが領が中心となって流通させる予定ですわ」
「妙だな……」

 ルークが難しい顔をしている間に、アメリはお茶を入れ終えた。
 状況が状況なので、ルークの分だけでなく、侯爵令嬢の分も用意してある。

「あの……お茶の用意ができました」
「ああ」

 むすっとした状態で、ルークが立ち上がる。

「あ、お持ちします」
「いや、いい。そこに置いておけ」

 ルークはそっけなく言うと、侯爵令嬢を睨みつける。

「その話はテンバートン侯爵と直接することにしよう。君はもう帰ってもらって結構だ」
「なっ」
「あ、お茶、入れてありますので、どうぞ飲んでから」

 取り繕うつもりで言ったのだが、侯爵令嬢は思い切りアメリを睨んで出て行った。

(……あら? 却って怒らせたのかしら)

 感じの悪い人である。そしてその様子を見て笑っているジャイルズ伯爵もルークも若干感じが悪い。

「……余ってしまいましたね。あ、ジャイルズ伯爵様、よければ。補佐官の皆様の分も入れますね」
「ああ、いただこう」
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