あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
「……前王朝の巫女姫は、本当に死んだのか?」
「王妹であられたローズマリー様ですね。彼女は、二十年前に失踪しております。行方を探してもまったく手掛かりはつかめませんし、おそらくは……」

 ルークは眉を寄せ、考え込む仕草をした。

「巫女姫がいれば、精霊の声が聞けるんだよな?」
「ええ、そう言われておりますね」
「この怪現象を解明するには、精霊自身から話を聞くのが早いだろう。そのためには巫女姫が必要だ。……死んだという決定的な証拠がないのなら、彼女を探すしかないだろう。生きていれば四十歳だ。年齢的には、生存の可能性は高い。万一彼女が生きていなくても、彼女の子孫がいるかもしれない。なんでもいいから手がかりを探してほしい」
「はっ」

(……やばい展開になって来たかも)

 アメリは血の気が引いていくのがわかった。見つかるわけがないのだ。ローズマリーはもう死んでいるし、子孫であるアメリはここにいる。
 もし自分が巫女姫の娘だとばれたらどうなるのだろう。
 最初は大事にされるかもしれない。でも、フローの話を伝えたところで、すぐに鉱業を復活させることなどできないのだ。

(役立たずと知られれば、処刑……? いや、恐ろしくて想像したくもない)

 前王朝の血筋など、反乱の芽にしかならない。

(嫌よ。王族とは無縁の暮らしをしてきたのに、殺されるなんて……)

 絶対に正体はばれたくない。だけど、フローの力が復活しないのもまた困る。

(私とルーク様、目的は同じなのに……! でも言えない。あなたがお探しの巫女姫はもう死んでいて、私はその娘です……なんて)

 とにかく、精霊石さえ見つかればいいのだ。
 そうすればフローが力を取り戻し、巫女姫を探さなくとも鉱業は復活するはずだ。

(そうよ。本腰入れて私もフローの精霊石捜しに協力すればいいんだわ!)
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