あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
「……そのパペット」
「はいっ?」

 まさかルークから問いかけられるとは思わず、声が裏返ってしまった。

「昨日光っていなかったか?」
「え?」

 一瞬、冷たいものが背中を伝った。

(ど、ど、ど、どういう意味? え? ルーク様、見えてる?)
「いや、そんなことはないと……思いますけど。なぜですか?」
「……いや、見間違いだな。それより、ロバート。先ほど侯爵令嬢が言っていた金鉱の話だが」

 話が変わったので、アメリはほっとして黙った。

「そ、そろそろ片づけをいたしますね!」

 立ち上がり、飲み終えたカップを回収していく。
 部屋から出ようとしたときにルークから声をかけられた。

「ああ、アメリ」
「はい?」
「お前に頼みがある。片付け終えたら戻ってくるように」
「……はあ」

 嫌な予感がしたけれど、命令に逆らえるわけもない。アメリは黙って頷いた。


 お茶道具を持って厨房に向かう途中、背中から声をかけられた。

「そこのあなた」

 そこにいたのは、フェリシアだ。

「はい、テンバートン侯爵令嬢様」
「ちょっといらっしゃい、話があるの」

 これまでメイドとして高貴な人からお呼びがかかることなどなかったのに、ルークと接点を持っただけで、急にいろんな人から呼び止められるのが怖い。
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