あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
 しかしまだ二日目だが、アメリは驚きの成果を見せている。
 まずはフローライトに関する知識だ。とてもじゃないが、メイドが持っている知識量ではない。かつて衣装係をしていたとでもいうならわかるが、経歴にはそんなものはなかった。
 そうかと思えば、掃除も手早く、動きは熟練のメイドのものだ。メイドとして働いてきたという言葉に嘘はないだろう。
 そして先ほどの本。壁一面の本棚の本を、タイトルだけとはいえ、こんな短時間で覚えられるとは、尋常ではない記憶力だ。

(それに……あのパペット)

 昨日、忘れ物をして部屋に戻った時、アメリがパペットで遊んでいたようだった。
 ロバートにはなにも見えていなかったようだが、ルークはあの時、パペットが光っているように見えたのだ。

(あの光は……なんだったんだ?)

 先ほど手に取った時は、なにも見えなかった。実際触って、おかしなところがあったわけではない。

(見間違いか……? それに)

 フローライトが変色することに関する考察も、他の誰の説明よりもルークには納得がいった。
 精霊は万物に宿るものだ。決して巫女姫に依存するものではないとルークは思っている。

(どちらかといえば、アメリが言ったように、精霊になにかしらが起こって、力を出せなくなったという方が自然だ)

 ルークの勘が告げていた。あの娘は、なにかを知っている。だからこそ、そばに置いて監視するべきだと。

(そういう意味では、あの娘を雑用係にすると決めた俺の直感は間違ってはいなかったわけだ)

 ルークが満足げに頷くと、ロバートがほほえみながら近づいてくる。

「考えはまとまりましたか」
「ああ」

 普段は気が利かないくせに、この間の読み方だけはうまいと思う。それだけで、彼を重用しようと思えるほど。

「なあ、もし巫女姫が生きていたら、どうするのが一番いいと思う?」
「丁重にお迎えすればいいんじゃないですか? 前王朝の姫とはいえ、鉱業の復活に役立つとあれば、殺す必要はないでしょう」
「それはそうだ。だが彼女が、城に戻るのを了承しなかった場合は? 失踪したのだから、なにかしら国に愛想を尽かせて出て行ったんだろう?」
「……そうですね。その場合は、巫女姫ということを公表せずに、内密で鉱業復興の協力をしていただけばいかがでしょう」
「そうだな。まあ、頷いてくれればだが。そもそも、見つかるかどうかもわからないからな……」

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