あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
「とってもおいしかったです!」
「それはよかった」
「でも、これをお仕事というのはさすがに……」
「いいと言っただろう。不本意に食事の時間に付き合わされているんだ、仕事でいい」
「でも……」

 思ったより楽しかったので……
 そう続けそうになって、アメリは気恥しくなって口を押さえた。

「でも、なんだ?」
「いいえ。では仕事ということにさせていただきます。普段食べられないようなものを食べられて、ありがたかったです。……でも」

 アメリはちらりと顔を上げ、ジャイルズ伯爵に視線を送る。

「ん?」
「ジャイルズ伯爵様に立って見ていられるのは落ち着かないので、もし今後も同じことがあるなら、伯爵様にも一緒に食べていただきたいです」

 ふたりは顔を見合わせた。

「だとよ、ロバート」
「私は帰って妻と食べたいので、ルーク様が私を早く解放してくださればいいんじゃないでしょうか」
「俺とふたりで食事では、アメリが緊張するだろう」
「私以外の側近に頼めばいいのでは」
「却下だ。お前はアメリの上司でもある。ちゃんと見張っていろ」

 可哀想なジャイルズ伯爵の申し入れは受け入れられることが無く、流されてしまった。

「アメリは、今日はもう上がっていいぞ」

 ルークにそう言われ、アメリは頷いて食器をワゴンにのせる。

「では、ついでに私が下げますね」
「ああ。ご苦労だった」
「はい。ではまた明日」

 雑用係二日目が終わる。
 ルークのそばにいるのはひやひやすることばかりだが、今日は案外楽しかった。
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