あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
「ルーク様は三男だが、誰より強い魔力を持って生まれてきた」
「ではなぜ、ルーク様が後継者とならなかったのですか?」

 現在レッドメイン王国の王太子は、第一王子だったはずだ。

「最初は期待されていたそうだ。しかし、魔力にも質があるらしい。ルーク様は攻撃魔法の方が得意な上に、魔力のコントロールが苦手でな。度々暴発し、結界魔法を習得することができなかったのだ。兄上方に勝る魔力を持ちながら、早々に後継者からは外された。心中を考えれば、複雑だったのではないかと思う」
「……そうなのですか」

 アメリには兄弟はいないし、なんなら生まれも特殊なので、人と比べられることはほとんどなかった。巫女姫の娘でありながら、その事実を知る者はほとんどなく、平民の気楽さを享受してきたのだ。

「一時、ルーク様は荒れてな。俺がルーク様の側近につけられたのも、その頃だ。力で彼を押さえ込むことができたのは、俺だけだったから」

 はは、とジャイルズ伯爵が笑う。確かに、ルークも大きいが、ジャイルズ伯爵は更に大きい。

(……そうなんだ)

 強靭な体もふんだんな魔力も持ちながら、うまく使えないがために劣等感を感じることになったというのなら、可哀想な気がした。

「でもな、ルーク様は腐って終わるような方ではなかった。その後、騎士団に入って体を鍛えてられてな。もともと才能があるのだろう。彼の剣の腕は、みるみる上達し騎士団長をしのぐくらいになった」
「すごい。努力家なんですね」
「そうだな。しかし、魔力のコントロールだけはずっとできなかった。魔力が暴発すると人に怪我をさせるからと、人を遠ざけてきたから、なかなか人に心を開かないようになってしまってなあ」

 しみじみとジャイルズ伯爵が言うが、アメリは彼の魔力が暴発したところなど見たことが無い。

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