あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
「金鉱が出たとかいう話か? 本当なのか?」
「ええ。それが、ある商人の功績なのです。彼は我が領を訪れ、ここから金鉱が採れるはずだと言いました。半信半疑で掘ってみたところ、本当に金鉱が出てきたのです。」
「なんだと?」
「もう三ヵ月は前の話です。私は彼を屋敷に留め、その後も彼を連れて採掘に行ったのですが、百発百中でした。聞くと、精霊の声が聞えるんだとか」

 ルークとロバートは、息を飲んで顔を見合わせる。
 それではまるで、巫女姫のようではないか。

「そいつは……年は?」
「二十歳だと言っていましたね。若者ですよ。商人と言いつつも、店を持っているわけでもありません。両親が早くに死に遺産を受け継いだため、それを元手に気に入ったものを買い付けては売るを繰り返して、いろいろな土地を転々としてきたそうです。で、この国に着た途端、不思議な声が聞えるようになったと」
「……テンバートン侯爵、その商人には会えるか?」
「ええ、もちろん。閣下にご紹介しようと、先日、領地から呼び寄せたところなのです。実は今日も連れてきているのですよ。議会の間、庭を散策しているはずです。よろしければお会いになりませんか」

 ルークは一瞬考えたが、すぐに頷いた。

「会おう」
「では連れてまいりましょう」
「いや、突然だし、あらたまった場では気づまりだ。皆で庭園散歩でもしようじゃないか」

 ルークの提案に、テンバートン侯爵は一も二もなく頷いた。

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