あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
「でも、母様は、パペットに力を送ったりしていたわよ?」
《昔が懐かしくてやっていただけじゃないのかな。でも精霊石がそこにあったから、僕的には助かったけど。精霊石には、長い年月をかけて僕の力が蓄えられているんだ。人間がそれを持てば、奇跡を起こせるくらいのものだよ。巫女姫の不在期間は僕の力が弱まるから、精霊石から力を引き出して補っていたんだ》
「そうだったの」

《でも、十年前、ローズマリーが死んだときに公王に奪われたんだ。あの時、公王はベリトに操られていた》
「ちょっと待って。ベリトって誰?」

 知らない名前が出て来て、アメリは焦る。
 フローの声は少し神妙になった。

「ベリトは悪魔だ。人の欲を好み、契約をもとに人に宿る。奴は国を亡ぼすのを遊びだと思っているんだよ。奴は変化の術が得意で錬金術を使う。僕の精霊石に呪いをかけ、その力を吸収しながら、王の欲を増大させていた」

 驚きすぎて、言葉にならない。
 アメリは一度深呼吸をした。この国で一時金がもてはやされたのは事実だ。錬金術ということは、あのときの金は本物ではなかったということなのか。
 問いかけると、フローは頷いた。

《そうだよ。他の鉱石を、まやかしで姿を変えて見せているだけ。時間が経てば、皆変質していったはずだよ。そのせいでこの国はめちゃくちゃになったんだ。当時の僕は、精霊石に呪いをかけられた時点でずいぶん弱ってしまったから、ずっとパペットの中で様子をうかがっていた》
「フローライトが変質したのも、その呪いのせい?」
《そう。打ち破るほどの力が、今の僕にはない》
「そして今、そのベリトがまた現れたってこと?」

 一気に血が下がっていくような感覚があった。

《今度は褐色の肌の人間になっていた。さっき、庭園にいたんだよ。僕、見つかっちゃったかもしれない。そこから、また力が出なくなってきたから》
 今も、あいつが精霊石を持ってるみたいだ、とフローは続ける。
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