あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
「じゃあその人から、精霊石を奪い取ればいいのね?」
《うん。でも危険だよ。君を失うと、僕は前みたいに倒れちゃうから無理しないでほしい》
「私が? どうして?」
《アメリは巫女姫だから》

 さらりと言われて、目が点になった。

「え? なんで、巫女姫は母様じゃないの?」
《ローズマリーもそうだけど、アメリ、君もだよ。僕の声、聞こえるじゃないか》
「でも姿は見えないよ?」
《それは僕のほうに力が足りないから。君は立派な巫女姫だよ。……ちょっと疲れたよ。僕は少し休むね》
「あっ、ちょっとフロー」

 パペットがパタリと床に落ち、フローはウンともスンとも言わなくなってしまった。

(わ、私が巫女姫……?)

 アメリはややパニックだ。

(ええと、巫女姫だったらどうなるんだ? そうだ。ルーク様が探してたんだっけ)

 でも、彼が巫女姫を探している目的は、鉱業の復興のためだ。
 鉱業を復興するには、フローが力を取り戻さなければいけなくて、そのためには精霊石が必要で、持っているのがベリトという悪魔で……。
 わざわざ自分の立場をルークに教える必要はない。精霊石さえ取り戻せれば、鉱業だって自然に復活していくはずだ。

「ベリト……ね。とにかくその人を探して、精霊石を返してもらわなくちゃ」

 フローを救えるのは、これが聞ける自分だけだ。

「待ってて、フロー」

 眠り続けるパペットをポケットにしまい、アメリは気持ちを引き締めて廊下へ出た。
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