マグノリア・ブルーム〜辺境伯に嫁ぎましたが、私はとても幸せです

 
 人生の転換期は、いつもと変わらない日に訪れるらしい。だから、誰もそれに気づかないという。
 私もそうだった。
 あの日、お父様の命令で嫁いだあの日から、私の人生は大きく変わったのだ。


 ----
 エレンザ公爵家は、代々ローウェル王国の摂政を勤める家柄であり、私はその家の長女として産まれた。だが今は次女である。おかしな話なのだが。

 今から五年前のこと。
 母が亡くなってすぐ、父は再婚した。
 再婚相手は男爵家の令夫人。つまり、不倫の果てに、父と継母は結ばれたのだ。

 二人は若かりし頃に恋愛関係にあったそうで、母が病に倒れている最中(さなか)()()を戻したのだ、と世間で噂されていた。
 しかも、『継母の連れ子であるエレナを長女として公爵家を継がせる』と、父と継母の間で取り決めが()されていたのである。


 そんな事情を私が知ったのは、住み慣れた屋敷の一画から、離れにある女中部屋に追いやられた時であった。
 そして、それ以後、私は公爵家令嬢とはいえない生活を送ることとなったのである。
< 1 / 33 >

この作品をシェア

pagetop