マグノリア・ブルーム〜辺境伯に嫁ぎましたが、私はとても幸せです
まさかの再会
アリーヴ国の王太子様らしき方が、王宮に到着した各国の客人を直々に出迎えて下さっている。
王太子様は、とても品の良い若い男性であった。
私たちを見て微笑んで、
「ローウェル国、カザールのジョハンセン侯爵夫人でいらっしゃいますね。遠いところをありがとうございました」
そんなふうに言って、深々とお辞儀をして下さる。
私とフェリスも腰をかがめ、丁寧にご挨拶を返した。
「お招き、ありがとうございます」
「侯爵様は先に王宮へ入られています。どうぞ、お二人も案内人に従って客室へお入り下さい」
案内人の方に連れられ、王宮の離れに向かう私は、まだ胸がどきどきしていた。
初めての外交、初めて見る他国の宮殿。
ローウェル国王の宮殿も、それはそれは見事であるけれど、アリーヴ国の王宮も負けていない。というか、建物の大きさや配置が似ている気がした。王宮って、どこも同じような造りなのかしら?
離れの廊下の先に、見慣れた姿があるのに気づいた私たちは立ち止まる。
「継母様、義姉様!」
「マリナ! それにフェリス?」
継母と義姉のエレナが、びっくりした様子でこちらに向かって歩いてきた。
「お前たちが何故ここに?」
継母に尋ねられ、挨拶しながら答える。
「辺境伯様と一緒に、お招きいただいたのです」
「マリナ様は、今は立派なジョハンセン侯爵夫人ですからね!」
フェリスが口を挟むと、
「お前になぞ聞いてませんよ」
と、継母が腹立たしげに答えた。
フェリスは私の後ろに隠れて、あかんべぇをしている。
エレナはさっきからずっと、私をじろじろと咎めるように見ている。そして、不満そうに口を尖らせた。
「辺境伯みたいな身分の低い貴族が、今回のような儀式に招かれるってどういうこと? 未婚の娘がいるわけでもないし」
エレナが妙なことを言う。
「エレナ、あまり余計なことは言わないように」
「未婚の娘?」
私が不審そうに呟いたところ、エレナが前のめりに説明してきた。
「アリーヴ王太子様は、先ごろ立太子の儀式を終えたところでしょ? そこで、そろそろご結婚をという話が出て、国内外から上流の貴族の娘を花嫁候補として探していらっしゃるのよ」
「国内外から?」
「現在、アリーヴ王国は周辺国と、とても良好な関係を保っていますからね。どこの国のお姫様でもいいのですよ。もちろん、国内の貴族の娘でもいいし」
到着早々に食事会、そして明日は一日中、舞踏会が催される、と継母に聞いて、私は目を丸くした。
私の顔を見た継母が不審げに言った。
「どうしたの? まさかお前、何も知らないの!」
そのまさか、なのだ。
ジョシュアさんから、『明日は舞踏会がありますよ、お楽しみに』と、今朝になって聞かされてはいたけれど。
「お前、本当に辺境伯夫人なのかい?」
継母が嘲笑うように言い放つが、反論できない。夫であるアンドレイ様と、まともに話もしたことがないなんて、口が裂けても言えない。
「でも、お母様、マリナのドレスを見て! こんな見事なドレス、私は見たことないわ。ローウェルの王女様だって、持っていらっしゃらないかもしれませんことよ!」
エレナが鼻息荒く言った。
王太子様は、とても品の良い若い男性であった。
私たちを見て微笑んで、
「ローウェル国、カザールのジョハンセン侯爵夫人でいらっしゃいますね。遠いところをありがとうございました」
そんなふうに言って、深々とお辞儀をして下さる。
私とフェリスも腰をかがめ、丁寧にご挨拶を返した。
「お招き、ありがとうございます」
「侯爵様は先に王宮へ入られています。どうぞ、お二人も案内人に従って客室へお入り下さい」
案内人の方に連れられ、王宮の離れに向かう私は、まだ胸がどきどきしていた。
初めての外交、初めて見る他国の宮殿。
ローウェル国王の宮殿も、それはそれは見事であるけれど、アリーヴ国の王宮も負けていない。というか、建物の大きさや配置が似ている気がした。王宮って、どこも同じような造りなのかしら?
離れの廊下の先に、見慣れた姿があるのに気づいた私たちは立ち止まる。
「継母様、義姉様!」
「マリナ! それにフェリス?」
継母と義姉のエレナが、びっくりした様子でこちらに向かって歩いてきた。
「お前たちが何故ここに?」
継母に尋ねられ、挨拶しながら答える。
「辺境伯様と一緒に、お招きいただいたのです」
「マリナ様は、今は立派なジョハンセン侯爵夫人ですからね!」
フェリスが口を挟むと、
「お前になぞ聞いてませんよ」
と、継母が腹立たしげに答えた。
フェリスは私の後ろに隠れて、あかんべぇをしている。
エレナはさっきからずっと、私をじろじろと咎めるように見ている。そして、不満そうに口を尖らせた。
「辺境伯みたいな身分の低い貴族が、今回のような儀式に招かれるってどういうこと? 未婚の娘がいるわけでもないし」
エレナが妙なことを言う。
「エレナ、あまり余計なことは言わないように」
「未婚の娘?」
私が不審そうに呟いたところ、エレナが前のめりに説明してきた。
「アリーヴ王太子様は、先ごろ立太子の儀式を終えたところでしょ? そこで、そろそろご結婚をという話が出て、国内外から上流の貴族の娘を花嫁候補として探していらっしゃるのよ」
「国内外から?」
「現在、アリーヴ王国は周辺国と、とても良好な関係を保っていますからね。どこの国のお姫様でもいいのですよ。もちろん、国内の貴族の娘でもいいし」
到着早々に食事会、そして明日は一日中、舞踏会が催される、と継母に聞いて、私は目を丸くした。
私の顔を見た継母が不審げに言った。
「どうしたの? まさかお前、何も知らないの!」
そのまさか、なのだ。
ジョシュアさんから、『明日は舞踏会がありますよ、お楽しみに』と、今朝になって聞かされてはいたけれど。
「お前、本当に辺境伯夫人なのかい?」
継母が嘲笑うように言い放つが、反論できない。夫であるアンドレイ様と、まともに話もしたことがないなんて、口が裂けても言えない。
「でも、お母様、マリナのドレスを見て! こんな見事なドレス、私は見たことないわ。ローウェルの王女様だって、持っていらっしゃらないかもしれませんことよ!」
エレナが鼻息荒く言った。