マグノリア・ブルーム〜辺境伯に嫁ぎましたが、私はとても幸せです
エピローグ①
唐突に、アンドレイ様がフード部分を被って顔を隠したので、私は近くに誰かが来たことに気づいた。
「お継母さま!」
「マリナ、エレナを見なかった?」
継母は焦った様子だ。
「お義姉さまが、どうかなさいましたか?」
「広間から出て行って、どこにもいないみたいなのよ」
私は話すべきか迷ったが、結局さっき起きたことを全部包み隠さず話してみた。
私の話を聞いた継母は、憎々しげに言った。
「あの男、アリーヴの貴族らしいけど、以前からエレナを狙っていたみたいなのよ。私は大反対なの。エレナは由緒あるエレンザ公爵家の跡継ぎなのですから、もっと上級のご子息との縁組が望ましいんですよ」
継母は肩をいからせて、城館へ急ぎ足で行ってしまった。
「やれやれ。あなたにお怪我がないか、心配もなさらないのですね。人間として品が無さすぎる」
フードを被ったままなので、アンドレイ様の表情はわからないけれど、声は少し怒気をはらんでいるようだった。私は脱力したように笑うしかなかった。
そのすぐ後、エレナがアリーヴ国商務大臣の三男坊と共に城から消えてしまった、という知らせが入って来て、城内は大騒ぎになった。
城内を隅から隅まで探してもエレナは見つからず、継母は半狂乱だったそうだ。
しかも、その後エレナの置き手紙が見つかって、継母は更に怒りくるうことになってしまった。
どうやら、エレナはその男性と駆け落ちしたみたいなのだ。