【辛口ヒューマンドラマ】雲にのりたい
第14話
(ブロロロ…)

午後2時過ぎであった。

私は、西鹿児島駅から路線バスに乗って知覧《ちらん》へ向かった。

出発してから30分後に終点のバス停に到着した。

ショルダーバッグを持ってバスから降りた私は、知覧平和公園《へいわこうえん》から西へ2・5キロ先にある住宅地ヘ歩いて向かった。

(ミーンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミーン〜ジーッ…)

近くの木々にとまっているセミたちの大合唱が聞こえていた。

住宅地に着いた私は、住民の方に養父《ちち》がかつて暮らしていた家はどこにあるのかとたずねた。

住民の方は『あのツタが絡まっている白いコンクリの家だよ。』と私に教えた。

私は、住民の男性が言うたコンクリ造りの家に行った。

ところ変わって、問題の家の前にて…

家の前できれいなハナワをお供えしていた年輩の女性をみかけた。

私は、年輩の女性に声をかけた。

「あの〜」
「はい。」
「この家で人が亡くなられたのですか?」
「そうよ…今から24年前にこの家で殺人事件があったのよ!!」
「殺人事件…」
「うん。」
「この家の家族が亡くなられたのですか?」
「そうよ!!この家で暮らしていた若い奥さまがベランダから転落したのよ…若い奥さまをベランダから突き落とした男は、40なかばの目つきの悪い夫よ!!」
「目つきの悪い夫…この家の表札は…都倉の家でしたね…」
「都倉雅俊《とくらまさとし》の家だけど、家の名義は奥さまの家の人よ…」
「この表札は、勝手につけられたものでしょうか?」
「それはどうかは分からないわ…話しを変えるけど…都倉雅俊《あのおとこ》は、ムシャクシャしたことがあったときには家族に八つ当たりしたり家中を暴れまわるなど…悪いことをしたのよ…キンリンでも暴れまわっていたからなお悪いみたいね…奥さまには5歳だった男の子がいたのよ…男の子は、事件のあと養護施設に送られたわよ…いまごろ、どこか遠い街の大金持ちの家の養子になって幸せに暮らしているわよ…」
「そうですか…」

私は、つらそうな表情でひと息ついたあとどぎたない姿の家をしばらく見つめた。

それから4時間後であった。

私は、路線バスに乗って鹿児島市内ヘ引き返した。

鹿児島市内に帰って来たのは夕方6時50分頃だった。

その後、私は鹿児島市内《しない》のあちらこちらを回って養父《ちち》を知っている人を探し回った。

この時、西鹿児島駅前の広場にいた乞食《ホームレス》のおっちゃんが養父《ちち》がいたケームショにシュウカンされた人がいることを聞いた。

乞食《ホームレス》のおっちゃんは『その人はヒラドにいる…』と言うたが、それ以上のことは話さなかった。

話しを聞いた私は、平戸市《ひらど》ヘ行くことを決めた。

日付が変わって、7月18日の深夜1時過ぎだった。

私は、国道3号線沿いにある終夜営業のラーメン屋で長距離トラックをヒッチハイクしたあと再び旅に出た。

(ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ…)

長距離トラックの仮眠ベットに寝ている私は、ぼんやりとした表情で考え事をしていた。

養父《ちち》のことを知っている元受刑者の男が平戸市《ひらど》で暮らしている…

元受刑者の男が養父《ちち》のことを知っている…

すべては…

平戸市《ひらど》に行けば分かるかもしれない…

……………

私は、知らないうちに眠りについた。

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