溺愛スイッチ⁉︎
お願い
昨日の夜、7時ごろ。
「頼む!るる、俺と入れ代わってくれ!」
「えぇっ⁉︎」
「一ヶ月間だけ、お願い....」
必死に懇願してくるのは、双子の弟、るか。
私と同じ顔に、同じ背丈、同じ声、同じ色の髪の毛。
ホクロの位置まで一緒の、大好きな弟。
違うところは、瞳の色だけで、私は黄緑色、るかは緑色。だから、唯一の違いでさえわかりにくい。
お母さんとお父さんも間違えるくらいだもん。
そんなるかだけど、現在、絶賛入院中。
その理由は、交通事故。
本人いわく、トラックとぶつかって吹っ飛ばされたらしい。
幸い、命に別状はなかったけど、足と腕を大胆に骨折しているんだって。
「全治、一ヶ月ですね」と、お医者さんから聞いた。
ってことで、るかは学校を休むことになるだろう。
そう思っていたのに。
(なんで入れ代わってって頼まれてるの.....っ)
るかは訴えるように私を見ながら、言う。
「るる、お願いだ。るるにしか頼めない....」
「.....」
(たしかに、顔は似てるって言われるけど.....。いくらなんでも、無理だよっ!)
「るる.....」
そ、そんな上目遣いされても、ぜったいやらないからねっ!!
———私がこんなに嫌がる理由は二つある。
一つ目は、るかが通う学校が、男子校であること。
(私が、男の子のこと、苦手だから....っ)
私が通うのは、女の子しかいない、女子校。
だから特に、男子と交流することが少ない。
必然的に、男の子が怖くなってしまったのだ。
「るか、やめなさい。確かにあんたはアイドルだけど、るるはあんたのお姉ちゃんなんだよ?」
はぁ、とため息をつきながら首をふるのはお母さん。
(助かった....っ)
私のことを見かねて、助け舟を出してくれたんだろう。
「だから、るか、潔く諦めな」
「るるは可愛いから、男子校になんか入れられないわ」そうブツブツと呟く。
(お母さん、“るるは可愛い”って、親バカすぎるよ.....)
サラッサラのながい黒髪と、スラっとした長身。私の自慢のお母さん。
きっぱりさっぱりしてるから、本当にかっこいい。
一方、お母さんに諭されて、しゅんとしながらくちびるをかむ、るか。
「アイドルだからこそ、たのみたいんだよ...」
るかはボソボソとつぶやいて、頭を枕にダイブさせた。
私が嫌がる二つ目の理由。
それは、るかがアイドルであること。
大人気アイドルグループ、 noblesse。
大胆でかっこいいダンスと、高い歌唱力で、デビュー時から大人気を博している男性アイドルグループ。
おんなじ顔なのに、私よりもはるかに可愛いるかは、一年前から、noblesseのかわいい担当として、世界へ向けて活動している。
(だからこそっ、私じゃ入れ代わったらバレちゃう.....っ)
もし、入れ代わったとして。
バレたら、事務所から追い出されて、るかは仕事を断たれることになるだろう。
それに、もしバレなかったとしても、運動音痴の私が入れ代わってたら、おかしな踊りをしてしまうかもしれない。(てか、絶対そうなる!!)
入れ代わって、バレないようにして、かつ、ダンスも踊れなくちゃいけないなんて.....
そんなプレッシャーに耐え切れる気がしない...。
だから、私は入れ代わることを渋っているのだ。
「るる、お願いだ!お前が良いって言ってくれたら、俺、なんだってするっ!!」
るかは、わたし手首をギュッと掴んできた。
「こら!るかっ!るるにそんなこと頼まないのっ!!」
般若のような形相でるかをにらむお母さん。
(ど、どうしよう.....)
るかとお母さんの顔を交互に見つめる。
戸惑っている私に、るかは、大きな声で言った!
「GOTIVAのチョコレート!!」
「⁉︎」
「るるが大好きないちご味のミルクチョコ!!」
「っ、わかった、やるっ!!!」
というわけで、私は、チョコレートにつられて、入れ代わることを受け入れてしまった。
お父さんは、仕事を中断して帰ってきてくれていたのだが、この話を聞き、憤慨していた。
「るるを男子校に⁉︎絶対にダメだ!」って。
私も、苦手な男の子と交流するのはとっっても怖いけど.......。
でも、大好きなGOTIVAのチョコには勝てない...っ!!
こうして私は、一ヶ月間のみ、noblesseのるかとして生活することになったのだった。
そして今、私は、男子校に足を踏み入れようとしていた。
「頼む!るる、俺と入れ代わってくれ!」
「えぇっ⁉︎」
「一ヶ月間だけ、お願い....」
必死に懇願してくるのは、双子の弟、るか。
私と同じ顔に、同じ背丈、同じ声、同じ色の髪の毛。
ホクロの位置まで一緒の、大好きな弟。
違うところは、瞳の色だけで、私は黄緑色、るかは緑色。だから、唯一の違いでさえわかりにくい。
お母さんとお父さんも間違えるくらいだもん。
そんなるかだけど、現在、絶賛入院中。
その理由は、交通事故。
本人いわく、トラックとぶつかって吹っ飛ばされたらしい。
幸い、命に別状はなかったけど、足と腕を大胆に骨折しているんだって。
「全治、一ヶ月ですね」と、お医者さんから聞いた。
ってことで、るかは学校を休むことになるだろう。
そう思っていたのに。
(なんで入れ代わってって頼まれてるの.....っ)
るかは訴えるように私を見ながら、言う。
「るる、お願いだ。るるにしか頼めない....」
「.....」
(たしかに、顔は似てるって言われるけど.....。いくらなんでも、無理だよっ!)
「るる.....」
そ、そんな上目遣いされても、ぜったいやらないからねっ!!
———私がこんなに嫌がる理由は二つある。
一つ目は、るかが通う学校が、男子校であること。
(私が、男の子のこと、苦手だから....っ)
私が通うのは、女の子しかいない、女子校。
だから特に、男子と交流することが少ない。
必然的に、男の子が怖くなってしまったのだ。
「るか、やめなさい。確かにあんたはアイドルだけど、るるはあんたのお姉ちゃんなんだよ?」
はぁ、とため息をつきながら首をふるのはお母さん。
(助かった....っ)
私のことを見かねて、助け舟を出してくれたんだろう。
「だから、るか、潔く諦めな」
「るるは可愛いから、男子校になんか入れられないわ」そうブツブツと呟く。
(お母さん、“るるは可愛い”って、親バカすぎるよ.....)
サラッサラのながい黒髪と、スラっとした長身。私の自慢のお母さん。
きっぱりさっぱりしてるから、本当にかっこいい。
一方、お母さんに諭されて、しゅんとしながらくちびるをかむ、るか。
「アイドルだからこそ、たのみたいんだよ...」
るかはボソボソとつぶやいて、頭を枕にダイブさせた。
私が嫌がる二つ目の理由。
それは、るかがアイドルであること。
大人気アイドルグループ、 noblesse。
大胆でかっこいいダンスと、高い歌唱力で、デビュー時から大人気を博している男性アイドルグループ。
おんなじ顔なのに、私よりもはるかに可愛いるかは、一年前から、noblesseのかわいい担当として、世界へ向けて活動している。
(だからこそっ、私じゃ入れ代わったらバレちゃう.....っ)
もし、入れ代わったとして。
バレたら、事務所から追い出されて、るかは仕事を断たれることになるだろう。
それに、もしバレなかったとしても、運動音痴の私が入れ代わってたら、おかしな踊りをしてしまうかもしれない。(てか、絶対そうなる!!)
入れ代わって、バレないようにして、かつ、ダンスも踊れなくちゃいけないなんて.....
そんなプレッシャーに耐え切れる気がしない...。
だから、私は入れ代わることを渋っているのだ。
「るる、お願いだ!お前が良いって言ってくれたら、俺、なんだってするっ!!」
るかは、わたし手首をギュッと掴んできた。
「こら!るかっ!るるにそんなこと頼まないのっ!!」
般若のような形相でるかをにらむお母さん。
(ど、どうしよう.....)
るかとお母さんの顔を交互に見つめる。
戸惑っている私に、るかは、大きな声で言った!
「GOTIVAのチョコレート!!」
「⁉︎」
「るるが大好きないちご味のミルクチョコ!!」
「っ、わかった、やるっ!!!」
というわけで、私は、チョコレートにつられて、入れ代わることを受け入れてしまった。
お父さんは、仕事を中断して帰ってきてくれていたのだが、この話を聞き、憤慨していた。
「るるを男子校に⁉︎絶対にダメだ!」って。
私も、苦手な男の子と交流するのはとっっても怖いけど.......。
でも、大好きなGOTIVAのチョコには勝てない...っ!!
こうして私は、一ヶ月間のみ、noblesseのるかとして生活することになったのだった。
そして今、私は、男子校に足を踏み入れようとしていた。