アラ還に、恋をしちゃダメなんですか?       ~匠先生の気持ち~
変わらないと。
まだいるはず。
そう信じて駅のコンコースを探していたら、いた。
楽しそうに誰かと見たことの無い笑顔で。

一人になったところで、
「誰?」
自分にも見せてもらいたいその笑顔。
捕まえておきたい。
この手を離してはいけないと思った。
連れて帰りたい。
今日は帰したくない。
それなら如何すれば良いか、とりあえず彼女の身の回りの物が必要かと思い、デパートに飛び込んだ。

正直、今の気持ち、自分にも分からない。
ただ、泊まりで必要な物、手当たり次第買い漁る。
彼女は自分で買うと言ってるが、俺は買いたくて買っているからと無視して買い続けた。
袋を両手いっぱいにして、彼女を連れてマンションに戻った。

買い物をしてても、マンションに着いても、さっきの光景が気になって、
部屋に着くなり彼女を壁に押し当てて、
「…誰。」
かっこ悪。
聞くつもりは無かったのに問い詰めてしまった。
固まってる彼女を見ていたら恥ずかしくて、なかった事のようにして、部屋の中に入っていった。

頭から水をかぶるように顔を洗い、
冷静に、冷静にと自分に言い聞かせてコーヒーを入れた。

何もなかった事のようにコーヒーを持っていった。
「飲む?」
何から話せば良いか、
まず『契約』について。
彼女はこの『契約』をどうも『大人のお茶のみ友達』って、解釈したらしい。
ただ、大人の…、って付いてるからまあ良いか。

「とりあえず、その『大人のお茶のみ友達』ってやつから始めようか」
そう言って抱きしめた。
大人の…なんだから、これぐらいは許容範囲でしょ。

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