アラ還に、恋をしちゃダメなんですか?       ~匠先生の気持ち~
自分のことは理解しているつもりだ。
必要な仕事の話はしているが、プライベートではあまり話さない。
でも今は話さないんじゃなく、言葉が見つからない。
話せない。
「聞きたいことがあるか」と聞いたが『聞きたいこと』は自分の方だ。
なぜ『契約』を受けてくれたかと。

何が言ってくれ。
目が合って、見つめ合って、緊張Max!
そこへ…、

ピンコン
紗依:今日帰る ごはんいる

彼女のスマホにメールが。
「あっ、帰ります。 娘が帰ってくるみたいで」

帰したくない気持ちと同時にほっとした。
聞きたい事はあったけど、自分の気持ちは確信した。
大人になってからの恋愛ではなく、幼い頃の恋心。
大人になっているから、多少の下心は有るけれど。
「送ってく」
車の鍵を持つと、すでに彼女は玄関で「地下鉄で帰ります」と、ぺこりと頭を下げ出て行った。

今までの言動や行動に反省した。
自分に正直に行動しようと。
来月にはアメリカに出張がある。
それまでに気持ちを伝えたい。
とりあえず彼女に連絡した。
仕事は月水金の週三日と聞いている。
なら空いてる火金曜日にランチでも誘おう。

「予定が無ければランチでも」と、電話を掛ける。
会えば、差し障りのない話をしてってお茶して別れる。
肝心なことは話せてない。

これではいつまで経っても変わらない。
何とかしないと、
「ゆっくり話がしたい。この後、うちに来て」
これだけのことを言うのに何回ランチに誘ったことか。

「もうすぐ三ヶ月だよね。」
彼女はどう思っているのか、目が合わせられない。
緊張してるのは俺だけ?
彼女はなんだか落ち着いている。

「寂しくなるね。」
えっ、まじかー!
心の中で思わずガッツポーズをした。
「由佳も!?」
思わず抱きしめた。
心の中はぴょんぴょん跳びはねてる。

抱きしめてる腕の中の彼女との温度差を感じた。

「あの、これからは正直にお付き合いをされてる方を紹介された方が…。」
は?
「最初にお伺いした時に見えちゃったんですよね。メールが…」
いやいや、大きな勘違い。
陽子は元嫁で既婚者、郁に環は問題外。
どうしてそうなる?
今はそれなりの付き合いもいない。

その他は特に無いらしいから…、
これで問題は解決できた。

「じゃ、これからもよろしく」
『契約』が取れた付き合いが出来る。
ハグしようとしたら、飛び込んできてくれた。
そのまま抱きかかえ、ソファに腰掛けた。

抱きしめ、耳から首筋にかけて唇を滑らせて、
「中学生みたい、がっついて…。」
危ない、危ない。
このまま止まらなくなってしまう。
がっついて嫌われないように、
今、このまま押し倒す訳には…。
今日は我慢しよう。
今日は送っていこう。

「来週末、空けといて。今日は送ってく」と。
来週から一週間、アメリカの出張がある。
帰ったら、彼女とゆっくり過ごしたい。
じっくり計画を立てよう。
こんなことをするのは初めてかも知れない。
今までこんなことが楽しいとは思わなかった。

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