アラ還に、恋をしちゃダメなんですか?       ~匠先生の気持ち~
以前、母に勧められて(…、欺されて)、『花のホテル&リゾート』のリゾートマンションを買った。
母が姉家族と行くために二部屋欲しかったからだろう。
仕事が不規則で投資や株を趣味のようにやってるのを知っているから進めてきた。
親孝行のつもりで買った。

我が家の女性達がお気に入りだから大丈夫だろう。
とりあえず週末の土曜日に予約を入れた。

それが、こともあろうにアメリカに出張中、宿泊予約の確認が実家に入った。
いつもと違う名前で予約が入っているからと。
ほっといてくれたら良かったのに、俺の名前ではなく『橘樹由佳』の名前に変更されてしまっていた。

出張の帰り必ず実家に寄るようにと連絡があった。
実家に寄ると、
全く何を考えてるのか、由佳さんと一緒に旅行に行くと。
彼女には了解してもらったと。
今から連絡する?
いや、直接言いたい。
明日の診察の時、何を言おう。
いや、診察時に私語は無理でしょ。
母は楽しそうにしている。

昨日帰ってきて、今日の診察。
疲れているのに、実家の疲れが上乗せされた。
昨日、帰るのが遅くなり連絡出来なかった。
とりあえず今日は処方箋に付箋を貼った。
『日曜日、改札口まで行く』と。

あれ、出張のこと話したかなぁ。

診察室に看護師長が入ってきた。
「匠先生、お疲れですね。また何かありました?」
あることはあるが、話せない。
まったくうちの家族は何を考えてるのか。
「女の考えてることは分からない」
つい愚痴を言いたくなる。
「大変ですね」
師長は仕事を済ませてにっこり微笑んで出て行った。
また余計なことを言ってしまったか?

もともと必要以外の連絡はしない。
しかも旅行前や旅行中は邪魔しないでおこうと思う。
だから連絡はしなかった。

母から『迎えに行くなら、今ホテル出たよ』というお節介なメールに感謝して家を出た。
ただ娘さんも一緒だから、今日は家まで送るだけにしようと。

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