アラ還に、恋をしちゃダメなんですか?       ~匠先生の気持ち~
点滴も終わり、少し顔色も良くなってきた。
「気がついた?」
今の状況が判らないのかきょとんとしてる。
「ランチ行く?
昼からオペ有るからあまり時間ないけど。誕生日でしょ。
誕生日に病院内の食堂とは色気がないけど」

食べられるなら食べた方が良い。
明らかに体重は落ちてるし、話せる範囲で話して元気が出ればと思った。

ご主人が亡くなったと。
何時も笑いながら家族の話をしていたが、今自身の気持ちがついてきてないのか、あまりにも他人事のようにたんたんと話す。

「じゃ、今フリーなんだ!」
まずい、心の声が出てしまった。
何を余計なことを言ってるんだ!
時すでに遅く、彼女はあっけにとられてた。

しかし今この状況を使いたい。
彼女に手伝ってもらいたい。
「実は、この年で一人でいると親が心配して。今までは一人で十分だと思ってたけど、50を過ぎるとなんか親孝行をしたくなるというか…。
お試しでもいいし、そう、かりに3ヶ月ほど試しに付き合ってもらえないかなぁ。
今まで、医者とか後継ぎとかステイタスで寄ってくる女性はいたし、俺自体もあまり気にしなかったんだけど、なんか面倒になってきて」
あまりにも軽すぎたか引かれているのがわかる。
本当は三ヶ月とかではなく、期間なんか関係なく付き合ってほしいのだが…。
正確に言うと『契約』してほい。

最近の周り、特に母親が煩い。
付き合うとか、結婚なんてとんでもない。
こっちにまったく気持ちがないのに付き合うとか相手に失礼じゃないか。
ご主人が亡くなった後なら気持ちも無く、なんとかビジネスとして付き合ってくれないだろうか。

連絡先をとりあえず、交換…してもらった。

なんとなく浮かれてる、あまりにも上手くいきすぎてる。

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