三毛猫が紡ぐ恋
第四話・壁新聞
校舎内をずっと鳴り響いていた吹奏楽部の練習音が消え、しんと静まり返った2年1組の教室で、島田海斗は教室後ろに張り出されている掲示物を眺めていた。
「1組に入ったの、久しぶりだわ」
「あー、うちの担任、休み時間もずっと居るしな」
他所のクラスに入ってはいけないというルールは特にない。授業中以外なら出入り自由なはずだが、自然と生徒が集まる教室が存在する。海斗達のクラス、2組の教室はまさにそれで、同じ陸上部の部員が多いということもあり、休み時間にもなれば他クラスから仲の良いメンバーが喋りに集まってきて賑やかになる。
反対に、隣の1組はいつも何だか入り辛い雰囲気があった。裕也の言った通りに担任の数学教師が授業以外でも教室に居ることが多いのもあるし、根本的に海斗と仲の良い奴がこのクラスには少ないのも理由だろう。たまに教科書なんかを借りに来ることがある、それくらいだ。
海斗的には今年のクラス分けは大当たりだった。このままクラス分けせずに3年生になって、今のメンバーで修学旅行に行きたいほどだ。
いつも通りに部活を終えて、いざ帰ろうとしたら裕也が「自転車の鍵が無い」とか言い出して、無理矢理に教室まで戻ってこさせられた。そんなことでもない限り、隣の1組の教室に入る用事はない。
「壁新聞、まだ貼ってるんだな。うちのクラスはもう返して貰ったぞ」
「2組の担任はマメだよな。うちは下手したら、学期が終わるまでずっと貼り換えないわ」
「あー……」
数学教師の顔を思い浮かべて納得する。口煩いけど熱血のベクトルが斜め方向に向いている男性教諭は、いつも教室に居座っている割にいろいろと雑だ。授業中だって黒板の消し方がいまいちで、後から書かれた文字が重なって読めないことが多い。理系が神経質だとかいう固定イメージは一瞬で払拭された。
秋の校外学習が終わってから書かされた壁新聞は、もう3か月以上貼りっぱなしらしく、日当たりの良い窓際の新聞は少し色褪せていた。少しだけ懐かしい思いでそれらを順に見回っていると、海斗はふと一枚の新聞の前で視線を止める。
「あれ?」
「1組に入ったの、久しぶりだわ」
「あー、うちの担任、休み時間もずっと居るしな」
他所のクラスに入ってはいけないというルールは特にない。授業中以外なら出入り自由なはずだが、自然と生徒が集まる教室が存在する。海斗達のクラス、2組の教室はまさにそれで、同じ陸上部の部員が多いということもあり、休み時間にもなれば他クラスから仲の良いメンバーが喋りに集まってきて賑やかになる。
反対に、隣の1組はいつも何だか入り辛い雰囲気があった。裕也の言った通りに担任の数学教師が授業以外でも教室に居ることが多いのもあるし、根本的に海斗と仲の良い奴がこのクラスには少ないのも理由だろう。たまに教科書なんかを借りに来ることがある、それくらいだ。
海斗的には今年のクラス分けは大当たりだった。このままクラス分けせずに3年生になって、今のメンバーで修学旅行に行きたいほどだ。
いつも通りに部活を終えて、いざ帰ろうとしたら裕也が「自転車の鍵が無い」とか言い出して、無理矢理に教室まで戻ってこさせられた。そんなことでもない限り、隣の1組の教室に入る用事はない。
「壁新聞、まだ貼ってるんだな。うちのクラスはもう返して貰ったぞ」
「2組の担任はマメだよな。うちは下手したら、学期が終わるまでずっと貼り換えないわ」
「あー……」
数学教師の顔を思い浮かべて納得する。口煩いけど熱血のベクトルが斜め方向に向いている男性教諭は、いつも教室に居座っている割にいろいろと雑だ。授業中だって黒板の消し方がいまいちで、後から書かれた文字が重なって読めないことが多い。理系が神経質だとかいう固定イメージは一瞬で払拭された。
秋の校外学習が終わってから書かされた壁新聞は、もう3か月以上貼りっぱなしらしく、日当たりの良い窓際の新聞は少し色褪せていた。少しだけ懐かしい思いでそれらを順に見回っていると、海斗はふと一枚の新聞の前で視線を止める。
「あれ?」