0限目〜ナイショの時間、始めました〜
素早く返された言葉に明里は「恥ずかしいところを見られていた」と俯き、落ち込んでしまいそうになる。しかし、舞は「別に英語が苦手でもいいじゃない」と言った。

「世の中、何でもできる人なんていないわよ」

「勉強も運動もできる片桐さんに言われても……」

「私、料理とか家事全般が苦手なの」

「えっ?そうなの?」

明里が素早く顔を上げると、顔全体を林檎のように真っ赤にした舞の顔があった。どうやら嘘を吐いている様子ではなさそうだ。

「両親ーーー特に母からは家事はできるようになりなさいって口酸っぱく言われてるんだけど、どうしても苦手なのよ。料理するといつも鍋を焦がしちゃうし、裁縫すると指を針で刺しちゃうし」

「何だか意外。片桐さんってSNSに出てきそうなおしゃれ料理パパッと作っちゃいそうだねってみんな言ってたから……」

「そ、それは人が勝手に言ったるイメージでしょ。本当の私は私と向き合ってくれないとわからないんだから」
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