不良が弟子になりまして。
3rdday

勉強会

三日目。私は、成瀬を図書室で待っていたのだが。



「ぇ、えっと.......?」


「あ、こんちわー!俺、成瀬のトモダチの美琴っていいます〜」

成瀬が、なぜか、お友達(?)を連れてきました。



「俺、来るなっつったのに......」


はぁ


ため息をつきながら、成瀬は美琴くんをにらむ。

(と、友達なのに、一緒にやるの、嫌なのかな...........??)


私は不思議に思うけど、美琴くんは知らん顔で、

「いやぁ、俺も水瀬ちゃんにベンキョー教えてもらいたくて♡」

なんて言ってる。


な、成瀬でも大変なのに.......っ⁉︎


(成瀬の友達も一緒に勉強するとなると.......)



——————絶対大変。


だって、美琴くんも成瀬も、正直、あまり関わりたくない人種だ。

いつもなら、絶対に関わろうとしないだろう。



そう思いながらも、“優等生”の私は、言ってしまう。

「わかりました。一緒にやりましょう!」



「やったーっ!」

「えぇ.....」

成瀬はめっちゃ嫌そうだけど、しょうがない。



本当は、私だって嫌だけれど。


成瀬には弱みを握られているし、お友達だったら、そのことを知っているかもしれない。


だから、諦めるしかないのだ。


(よし。この拷問のような時間、絶対に乗り切ってみせるっ!!)


こうして、私たち三人は机をはさんで向き合いながら、勉強を開始したのだった。






..................数分後。



私と成瀬がある程度勉強している最中、美琴ってヤツは、ずっとしゃべっていた。


開いているノートは真っ白で、問題を解く気さえないみたい。



解かないだけならいいのだけれど。




「ねぇねぇ、水瀬ちゃん!好きなヤツいんの〜?」




「ねぇ、好きなタイプは〜?」




「俺とかどう〜?」




本当にうるさい。


こっちは静かに勉強したいというのに、ヤツはずっと話しかけてくる。主に、私に。









(.......................もーっ、なんとかしてよっ)


視線を成瀬に送ると、成瀬もげっそりしていて、「どうしようもない」とでも言うように、肩をすくめられた。




「ねぇ、理真ちゃん!聞いてる?」


水瀬ちゃんから、理真ちゃん呼びになってるし。




はぁ、これ、ずっと続くの?












疲れ果てて、なにも言えなくなったとき。









「俺、飲み物買ってくるから」







そう言って成瀬がいきなり立ち上がり、図書室の外へと歩いていったのだ。



(ま、まさか)


私への責任丸投げ⁉︎

私が美琴くんも一緒に勉強しようって言ったから⁉︎








ゔぅ.......。


自分の行動を後悔していると。












美琴くんがやけに真剣な顔で私を見つめる。



「ねぇ、理真ちゃん。理真ちゃんは、あいつのこと、どう思ってる?」





(え⁉︎)




「ど、どうって..........」



好き、とか嫌い、とかってこと⁉︎




「あ、違う違う。人としてって感じ」



私の困惑を悟った美琴くんが苦笑しながら言い直してくる。




(あ、勘違いか.............っ)


少し恥ずかしくて、笑ってごまかす。




「人としてって言われると.........、まだよくわからないけど、本当は、いいやつだと、思います」


内心では、実際、本当にそう思っている。





だって.........。


一日目もなんだかんだあったけど、ちゃんと勉強してたし。





———————昨日、ケガしてきた時も、ネコだって嘘ついて、相手のことを庇ってたし。私に言えば、先生にいくらだって言いつけられるのに。






まだ二日しか一緒にいないけど。



多分、性根はいい人なんだろうな。



なんとなく、そう思った。





「そっか」

美琴くんは、私の言葉を聞いて、満足そうにうなずいた。


「まぁ、色々あると思うけど、成瀬のこと、助けてやってくれ〜」


「.........うん」


勉強のことかな?


——————そりゃ、大変だろうけど、頑張るしかないよね。

引き受けちゃったもん。







ニヤッと笑った美琴くん。


「成瀬とお幸せに〜」



「⁉︎」



そう言って、いきなり席を立ったかと思うと、手をひらひらさせて帰っていった。





な、なんだったんだ、美琴くんって...........!!


嵐のように来て、嵐のように去っていったなぁ。



私はしばし、呆然としてしまった。











そして、私は突然、ハッとする。






それよりもっ!!




“成瀬とお幸せに〜”って、どういうこと.......っ⁉︎







ぐるぐると回る思考回路は、止まる気がしなかった。


え、え⁉︎



成瀬と私が付き合うっ、とかっ、そ、そういうことなの............っ⁉︎





いや、で、でもっ、そんなことはないし.......。





えぇ......??




















私は、そのことが気になってしょうがなくて、成瀬が飲み物を買ってきてくれた後も、勉強に身が入らなかった。

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