次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。
「でも。まぁ、そんなに酔ってないみたいだし……気をつけて帰るんだよ? 分かった?」
「うん。ありがとう、美子。またね」
美子はお迎えが来たらしく帰って行った。
それから、白ワインをベースにスライス切りにしたオレンジとレモンを加えたカクテルを注文して飲んだ。その一杯を飲み終わると、私は会計をしてお店を出る。
タクシーを捕まえようと思ったのに夜風が気持ちよくてそのまま歩いて駅に向かおうとした時、久しぶりのヒールで蹌踉けそうになり転びそうになる。
「あっ……」
突然、人の気配と共に身体が支えられて転ばないで済んだ。
「大丈夫?」
「……あ、ありがとうございまし――」
――た。と言いかけたが驚いてしまって言葉は出なかった。
だってそこには知っている顔の男性がいたから。
「ち、あきさん……どうしてこんなとこに?」
「いや、それはこっちのセリフだよ。花暖」
そこにいたのは、清澄千暁。
清澄家本家の長男で次期当主だ。私が旦那様に結婚を提案された相手である。
ガタイ良いけど強面で皆から恐れられている彼は、今日も変わらず極道の人かと思えるくらいに厳つかった。