スパダリドクターの甘やかし宣言
 仲居さんが出て行った後、私は窓が開け放たれた広縁に腰掛けて火照った顔を冷ましていた。
 夏が近づいているけれど、山の中なだけあって頬を掠める風はひんやりと冷たい。今の私には心地よい涼しさだった。
 野趣あふれる岩造りの露天風呂は源泉掛け流しで、溜まった温泉からはもくもくと湯煙が立ち上っている。

 浸かったら、すごく気持ちよさそう。
 温泉という魅惑の存在に早速心を惹かれていると、不意に背後から抱きしめられた。

「温泉、入る?」

 耳朶に触れる恭介の吐息を熱く感じるのはどうしてだろう。

「うん、そうだね。折角お部屋に露天風呂があるから入ってみようかな」
「じゃあ、早速入るか。」
 
 そう言って、恭介は私のブラウスのボタンをプチプチ外し始めた。
 ん……?

「……なんで脱がせるの?」
「なんでって入るんだろ?」
「入るけど……」

 スルスルと腕からブラウスを抜き去り、体を離した恭介が今度は自分のシャツを脱いでいる。
 んん……?

「ちょっと待って。まさか一緒に入るつもりじゃないよね?」
「そのまさかだけど。ほら、今日は莉子をずっと甘やかすって決めてるから。俺が全部洗ってやるし、莉子は何もしなくていいよ」
「ちょ、ちょっと!」

 無駄に手先が器用な恭介は、いつの間にか私のスカートのホックまで外していて。
 あっという間に下着姿になってしまった私は抵抗する間もなく恭介に抱きかかえられ、露天風呂横のシャワーブースまで連行されてしまった。

 変なことはしないで、と一応釘は刺して一緒にシャワーブースに入ったのだけれど。
 結局散々体を弄られ、快感を否応なしに高められて――温泉に浸かる頃にはすっかり体の力が抜け切ってしまっていた。
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