スパダリドクターの甘やかし宣言
「もう、変なことしないでって言ったのに……」
「莉子が可愛いのが悪い。目の前にいて我慢なんてできるわけないだろ」
「なにそれ……」

 そんな責任転嫁、やめてほしい。
 胡座をかいた恭介の膝の上に横を向く形で座らされた私は、クッタリしながら彼の胸にもたれかかった。重いかもしれないけれど、体に力が入らないのは恭介のせいだから仕方がない。

「莉子の体は全部可愛くて好きだ。この柔らかいほっぺも」

 そう言いながら、恭介は私の頬を喰んだ。

「真っ白で綺麗な肌も」

 次は私の肩に口付ける。

「それにこの頑張ってる手も。莉子の全部が愛しくて、どうしようもなくなるんだよ」

 湯船から私の手を掬い上げて、恭介は慈しむように私の手を撫でた。
 その優しい手つきに心も慰撫されて、私はつい弱音を吐いてしまう。

「……私、ちゃんと頑張れてるかな?」

 患者さんのために全力を尽くす、そんな自分の頑張りは独りよがりなものなんじゃないかと、そう思う瞬間もある。赤羽さんのプリセプターになってからは特にそうだ。
 また心に影がさして項垂れると、恭介がギュッと私を抱きしめた。
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