スパダリドクターの甘やかし宣言
「……私、私も、そうやって患者さんのためにいつでも頑張ってる恭介が好きだよ」

 冷酒を持ってきた仲居さんが去ってから、溢れてやまない想いをそのまま言葉に乗せる。
 すると恭介は一瞬目を見開いたかと思うと、とっくりとお猪口を手に取り、おもむろに立ち上がって私の隣に腰を下ろした。

 どうしたんだろう?
 そう思って見上げると、彼は目を細めて柔らかく微笑んだ。

「俺もさ、莉子の好きなところはいっぱいあるんだけど、最初にいいなって思ったのは、分娩の時にすごいいい笑顔で赤ちゃん取り上げるのを見た時なんだよね。まるで自分の子みたいに喜んでて、いい奴だなって思ったんだ」

 そんなこと、初めて聞いた。
 恥ずかしい気持ちが半分と、そんなところまで見てくれていたんだと驚く気持ちが半分。
 どう返せばいいのかわからなくて彼を見つめたままでいると、赤くなった私の頬を指の背で撫でられた。
 くすぐったくて、ちょっと肩をすくめる。

「……この仕事ってキツいことも多いけど、どんな時でもへこたれないで頑張ってる莉子のことがだんだん気になって、色んな莉子を知るたびにどうしようもなく好きになっていったんだ。こんなに誰かに夢中になったのは、莉子が初めて」
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