スパダリドクターの甘やかし宣言

信頼の証

 一泊二日の箱根旅行ですっかりリフレッシュした(甘やかされたともいう……)私は、翌日からまた仕事に戻った。
 仕事はやっぱりハードだし、赤羽さんとも打ち解けられていない。注意をしたら相変わらず「これくらいのミスで……」と言いたげな不服そうな顔をしている。
 でもそんな赤羽さんの態度も、前ほど気にならなくなった。

 たとえ疎まれていたとしても、彼女が一人前の助産師として成長してくれた方がいい。私は自分が正しいと思ったことを貫いていけばいい。
 恭介の言葉が私の指針になっていたからだ。

 それに、赤羽さんの態度も以前よりは刺々しさが減った気もする。陰口を言っているところを私が釘を刺したからかもしれない。
 意外と素直な面もあるのかも?なんて思いながら、仕事に励んでいたとある日。

(悠木さん、なかなかお産進まないなぁ……)

 今日私は、今朝早く陣痛発来で来院した初産婦の悠木さんを担当していた。当初は初産婦さんにしてはお産の進みも良く、赤ちゃんが出てくる子宮口が全開大になるのにもさほど時間はかからなかったので、このままスルッと娩出するかなぁ、なんて思っていたのだけれど。

 六時間経っても赤ちゃんの頭がなかなか下に降りてこず、陣痛の強さも弱まってしまっていた。
 今は陣痛促進剤も投入して、少しずつまた陣痛が強くなってきたところだ。けれども先程内診した際も、赤ちゃんの頭は分娩できるほどには下がっていなかった。
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