スパダリドクターの甘やかし宣言
 そうこうしているうちに酸素マスクから酸素が行き渡ったのか、赤ちゃんの心拍数も再び上昇し始めた。

「……赤ちゃんは、大丈夫ですか?」

 不安げに問いかける悠木さんに、御室先生はそれまでの硬い表情を取り払って、ニッコリと笑顔を向ける。

「はい、大丈夫ですよ。赤ちゃん、元気そうです」
「よかった……」
「ただ、子宮の入り口は十センチ開いていて全開なんですが、赤ちゃんの頭がまだ下がってきていないんですね。吸引分娩もできない位置に赤ちゃんがいるので、赤ちゃんへの負担を考えて帝王切開に切り替えようかと思います」
「帝王、切開……」

 悠木さんが痛みに耐えながら息を呑むのがわかった。

「な、なんとか下から産めませんか?私、ここまで頑張ったのに……うぅ……」
「そうですねぇ……」

 御室先生が電子カルテとCTGモニターを交互に見比べながら、顎に手を当てて考え込んでいる。
 彼が悩んでいるのは、なにも悠木さんから懇願されたからじゃない。赤ちゃんが無事であれば可能な限り医師の介入なしで娩出できる方が、母体の負担が少ないからだ。

 悠木さんのお腹のジェルを拭い、赤羽さんに悠木さんの背中をさすってあげるように指示を出しながら、御室先生の判断を待つ。
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