スパダリドクターの甘やかし宣言
 分娩台への変形が完了して準備も整った。
 赤羽さんに悠木さんの足元に位置取ってもらい、私は赤羽さんのすぐ隣に立つ。
 いつもは分娩介助は悠木さんに任せて私は後ろから見守る形をとるけれど、今日は分娩経過によっては至急の対応が必要になるだろうから、何かあってもすぐに対処できるようにこの位置。その時は口も手もお構いなく出すつもりでいる。

 赤羽さんにとっては鬱陶しいことこの上ないだろうけれど、産婦さんと赤ちゃんの安全が第一なので、そんなこと気にしていられない。

「赤羽さん、悠木さんにいきみ方を教えてあげてね」
「は、はい。悠木さん、次に痛みが来たら、えっと、お腹に力を入れる感じで少しいきんでみてください」
「くっ……うぅーんっ!!」
「――そう、上手ですよー!目を開いて、前をしっかり見てくださいね!赤羽さんの言った通りに、また次の痛みがきたらそんな感じでいきんでくださいね。まだ赤ちゃんの頭下りきってないから、力は入れすぎずに」
「は、はい……!うぅーっ!」

 そうして何回もいきんでいると、悠木さんの子宮の収縮が次第に強まってきた。赤ちゃんの心拍も下がっていない。これなら、いけるかもしれない……!

 陣痛の合間に内診をして、赤ちゃんの下がり具合を確認する御室先生の反応を待っていると、彼は私の方を振り返って大きく頷いた。

「いい感じですね。悠木さんの頑張る気持ちが赤ちゃんにも伝わったのかもしれません。このままいきむのを続けていきましょう」

 返事をする余裕はないようで、悠木さんは小さく頷くとまたいきみ始めた。
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