スパダリドクターの甘やかし宣言
「うぅ〜〜っ!いたい、いたいぃ〜!!」

 悠木さんの声に嗚咽が混じる。今、陣痛は一分間隔でピークに達している。痛いし、苦しいし、とても辛いはずだ。私にまでその痛みが伝染してくるようだった。

「苦しいですよね。でも、もうすぐ赤ちゃんに会えますよ!頑張れ、頑張れ!」

 悠木さんを励ます私まで必死になってしまう。赤ちゃんの頭が見え隠れしてきて、いよいよその時が近づいてくる。

「赤羽さん、もうすぐ赤ちゃん出るからね」
「は、はい……」

 分娩室に悠木さんのいきむ声が響き渡る中、私がそう告げると赤羽さんの顔に緊張が走った。青ざめて眉根を寄せた表情はいかにも自信がなさげだ。
 助産師になってまだ二ヶ月と少し。お産を取るのが初めてではないとはいえ、まだまだ不安が拭えない気持ちはわかる。

「前回も上手にできてたよ。だから今回も大丈夫。絶対できるよ」

 だからこそ私は、彼女を奮い立たせるように笑顔を浮かべた。
 経験が間違いなく赤羽さんを成長させてくれるから。何かあったら必ず私と御室先生がサポートするから。
 だから臆さずに挑んでほしい。

 私の気持ちが伝わったのかどうかはわからないけれど、赤羽さんは表情を引き締めて大きく頷いてくれた。

 赤ちゃんの頭はもう完全に見えている。

「悠木さん!前しっかり見ていてくださいね。もうすぐ赤ちゃん出ますよー!」
「うう〜〜っ!!」
「上手上手!たっぷり深呼吸してー!はい、いきんでー!」

 赤ちゃんを取り上げることに専念する赤羽さんの代わりに、私が悠木さんに声をかける。
 あともう一息だ。

 頑張れ、頑張れ、と鼓舞しながら、赤羽さんのサポートを行う。
 そして――
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