スパダリドクターの甘やかし宣言
 産後は経過観察のため、悠木さんには二時間分娩室で休んでもらった。経過も問題なく、談笑しながら悠木さんを病室へ案内する。

 やっと、ひと段落。
 お産で一番大変なのは言うまでもなくお母さんだけれど、介助する助産師もそれなりに疲弊する。
 他のナースに悠木さんについての情報共有をした後で、やっと休憩にありつくことができた。疲労を滲ませつつ、遅めのお昼ご飯を食べに職員食堂へと向かう。

 今は午後三時前、昼時を大幅に過ぎたこともあって、職員食堂は閑散としていた。
 だからその二人の姿は、入ってすぐに嫌でも目についた。

「お疲れ様」

 御室先生――いや、恭介の声がガランとした食堂に響いた。彼の向かいに座っているのは、きっと赤羽さんだ。後ろ姿だけど、間違いなくそうだと言い切れる。

「食いながらでいいかな?赤羽さんも食べながらで。それで、さっき言ってた話なんだけどさ」
 
(あ……)

 これって私、いない方がいいんじゃ……。
 話って、私の愚痴?ひょっとすると告白?
 いずれにせよ、私が聞くべきではない気がして。
 二人に気付かれないよう、足音を立てずに踵を返そうとしたその時――
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