スパダリドクターの甘やかし宣言
「じゃあ今日は祝杯といこう。多分莉子の方が早く終わると思うから、待っててもらってもいいか?」
「うん!」

 ちょうどその時着信音が鳴り響いて、恭介がスクラブの胸ポケットから院内PHSを取り出した。

「はい、御室です。はい、はい――わかりました、すぐに戻ります」

 通話を切った恭介が、私を見るなり申し訳なさそうに眉を下げる。

「LDRの早川さん、もう子宮口全開らしいから行ってくる」
「うん、いってらっしゃい。食器片付けておくから置いておいて」
「悪い。はぁ、珍しく莉子と昼一緒だったのになぁ」

 残念そうに呟きながら、恭介が立ち上がる。名残惜しいのは私も同じ。
 でも待っている患者さんがいるから、私は笑顔で彼を送り出す。

「夜、楽しみにしてるね」
「ああ」

 小走りで去っていく後ろ姿を見送った私は、大口を開けて最後の一口を詰め込んだ。またバタバタするからなるべく早く戻らなきゃ。咀嚼をしながら、私は残りの勤務時間に向けて気合を入れ直すのだった。
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