スパダリドクターの甘やかし宣言
この会話が終わるまで待ってあげてもいいかも……と諦めて、私はラウンドの準備を進めることにした。耳はそばだてて、二人の会話に注意を払う。
これは盗み聞きとかじゃなくて……会話の切れ目を探るだけであって……と自分の中で言い訳を並べつつ。
「お、よく知ってるね。俺に彼女いるって」
「へ?」
あっけらかんとした御室先生の言葉に、私の心臓が大きく跳ねる。思わず二人の方に視線を向けると、赤羽さんも呆気に取られていた。もしかして、期待していた言葉と違ったとか……?
「彼女も同業なんだけど、なかなか休みが合わなくてさ。結局、いつも家で、出かけるにしても飯食うだけで終わっちゃうんだよね。赤羽さん、どっかデート用にいい場所知ってる?」
「い、いや……私はその、あんまりそういうの詳しくなくて……」
「意外だな。若いからデートスポットなんていくらでも知ってると思ったけど」
「あ、あはは……」
赤羽さんはすっかり引き気味になっている。不意に、御室先生が立ち上がった。
「俺、もう行くけど。赤羽さんもサボってないで仕事戻った方がいいよ」
なんて朗らかに笑いながら、チクリと釘を刺すのだから彼の社交能力は本当にすごい。
赤羽さんがそそくさと立ち去っていくと、御室先生は今度は私の方に近づいてくる。
「水瀬さん、明日帝王切開予定のツインの田中さんなんだけどさ」
「は、はい!」
突然呼びかけられ、私は背筋をピンと伸ばした。
それまでのモヤモヤクサクサした気持ちを切り替えて、御室先生に向き直った。
これは盗み聞きとかじゃなくて……会話の切れ目を探るだけであって……と自分の中で言い訳を並べつつ。
「お、よく知ってるね。俺に彼女いるって」
「へ?」
あっけらかんとした御室先生の言葉に、私の心臓が大きく跳ねる。思わず二人の方に視線を向けると、赤羽さんも呆気に取られていた。もしかして、期待していた言葉と違ったとか……?
「彼女も同業なんだけど、なかなか休みが合わなくてさ。結局、いつも家で、出かけるにしても飯食うだけで終わっちゃうんだよね。赤羽さん、どっかデート用にいい場所知ってる?」
「い、いや……私はその、あんまりそういうの詳しくなくて……」
「意外だな。若いからデートスポットなんていくらでも知ってると思ったけど」
「あ、あはは……」
赤羽さんはすっかり引き気味になっている。不意に、御室先生が立ち上がった。
「俺、もう行くけど。赤羽さんもサボってないで仕事戻った方がいいよ」
なんて朗らかに笑いながら、チクリと釘を刺すのだから彼の社交能力は本当にすごい。
赤羽さんがそそくさと立ち去っていくと、御室先生は今度は私の方に近づいてくる。
「水瀬さん、明日帝王切開予定のツインの田中さんなんだけどさ」
「は、はい!」
突然呼びかけられ、私は背筋をピンと伸ばした。
それまでのモヤモヤクサクサした気持ちを切り替えて、御室先生に向き直った。