スパダリドクターの甘やかし宣言
だから大丈夫。明日からもまた挫けず頑張れる。そう思って笑ってみせるのだけれど、恭介は不服顔だ。
「俺としては頼ってほしいところだけど、莉子は強いからな。でも本当にしんどくなったら、ちゃんと俺に言うんだぞ。折角同じ職場にいるんだから、少しはカッコつけさせてくれ」
「いっつも頼ってるよ。困った時はすぐ助けてくれるし」
「それは仕事なんだから当たり前だろ?……ったく、しょうがないなぁ」
呆れたように笑った恭介は肩をすくめて、それから頬杖をついた。コテンと首を傾げて私を見やる。
「俺は俺の役目を果たすとするか」
役目って何?
目をパチクリさせていると、恭介がニッと口角を上げて不敵な笑みを浮かべた。
「莉子、来週二連休だろ?俺も休み取ったから、旅行に行こう」
「へ?りょ、旅行?」
「そうそう。俺たち付き合ってるのにデートらしいデートしたことないだろ?だから」
「だからって……」
確かに、デートといったら食事に行くくらいだ。しかも大抵病院からの呼び出しがあって途中でお開きになることも多い。
嬉しくないといったら嘘になるけど。
「でも折角のお休みだし、休まなくていいの?旅行なんて疲れちゃうんじゃない?」
出産はいつ何時起こるか分からない。それに対応する産科医の勤務スケジュールはかなりハードなのだ。日勤の後そのまま当直に入って、その後また日勤で計三十六時間勤務……なんていう日もザラにある。
だからせめて休日くらいはしっかり休んでほしい。嬉しさよりもまず心配が先立って眉を下げると、不意に彼の手が伸びてきて、ワシャワシャと髪をかき混ぜるように頭を撫でられた。
「俺を舐めるなよ〜?可愛い彼女を甘やかすことが、今俺にとっての最優先事項だからな。全然苦なんかじゃないっての」
「あ、甘やかすって……」
そんなの恥ずかしすぎる。大体、甘やかされるようなキャラでもないし。
ボサボサになってしまった髪を手櫛で整えながら、羞恥で目を伏せた。酔ってもいないのに、頬がじんわりと火照っていくのを感じる。
どうしよう、多分今、すごく赤くなっている。
「莉子は一人で頑張れちゃうからさ。せめて恋人として、頑張る莉子を思いっきり甘やかさせてよ」
もしかして、「俺の役目」ってそういうことなの?
恭介から紡がれる甘い言葉にどうしようもなく胸がキュンとして、私は無意識に弧を描いてしまいそうになる唇を引き結んだ。
真っ赤に熟れた顔を隠せずに、私は俯きがちになりながらコクンと一回だけ頷いた。
「俺としては頼ってほしいところだけど、莉子は強いからな。でも本当にしんどくなったら、ちゃんと俺に言うんだぞ。折角同じ職場にいるんだから、少しはカッコつけさせてくれ」
「いっつも頼ってるよ。困った時はすぐ助けてくれるし」
「それは仕事なんだから当たり前だろ?……ったく、しょうがないなぁ」
呆れたように笑った恭介は肩をすくめて、それから頬杖をついた。コテンと首を傾げて私を見やる。
「俺は俺の役目を果たすとするか」
役目って何?
目をパチクリさせていると、恭介がニッと口角を上げて不敵な笑みを浮かべた。
「莉子、来週二連休だろ?俺も休み取ったから、旅行に行こう」
「へ?りょ、旅行?」
「そうそう。俺たち付き合ってるのにデートらしいデートしたことないだろ?だから」
「だからって……」
確かに、デートといったら食事に行くくらいだ。しかも大抵病院からの呼び出しがあって途中でお開きになることも多い。
嬉しくないといったら嘘になるけど。
「でも折角のお休みだし、休まなくていいの?旅行なんて疲れちゃうんじゃない?」
出産はいつ何時起こるか分からない。それに対応する産科医の勤務スケジュールはかなりハードなのだ。日勤の後そのまま当直に入って、その後また日勤で計三十六時間勤務……なんていう日もザラにある。
だからせめて休日くらいはしっかり休んでほしい。嬉しさよりもまず心配が先立って眉を下げると、不意に彼の手が伸びてきて、ワシャワシャと髪をかき混ぜるように頭を撫でられた。
「俺を舐めるなよ〜?可愛い彼女を甘やかすことが、今俺にとっての最優先事項だからな。全然苦なんかじゃないっての」
「あ、甘やかすって……」
そんなの恥ずかしすぎる。大体、甘やかされるようなキャラでもないし。
ボサボサになってしまった髪を手櫛で整えながら、羞恥で目を伏せた。酔ってもいないのに、頬がじんわりと火照っていくのを感じる。
どうしよう、多分今、すごく赤くなっている。
「莉子は一人で頑張れちゃうからさ。せめて恋人として、頑張る莉子を思いっきり甘やかさせてよ」
もしかして、「俺の役目」ってそういうことなの?
恭介から紡がれる甘い言葉にどうしようもなく胸がキュンとして、私は無意識に弧を描いてしまいそうになる唇を引き結んだ。
真っ赤に熟れた顔を隠せずに、私は俯きがちになりながらコクンと一回だけ頷いた。