王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)
1. 卒業パーティー前夜

 お父様とお母様が領地から、ここ王都に所有する邸へ戻ってきた気配を感じた。

 平素であれば、王太子であるセルジュ殿下に相応しいよう、淑女らしく振る舞うことを心掛けるところだけれど……

(今はそれどころじゃない!)

 自室のドアを勢いよく開け放ち、廊下を全力疾走した。

 階段を駆け下りている途中で、玄関ホールにいる両親が私に顔を向けた。

(あっ……)

 私の足は急停止した。

 その表情だけで分かってしまったからだ。

 私とセルジュ殿下に未来はないのだと。

 卒業パーティーの前夜にして、王立学園で殿下と共に過ごした日々が、急速に遠ざかっていくようだった。

 私はそれらを繋ぎとめたくて、手摺りを力いっぱい握った──

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