王太子殿下と婚約していますが、卒業パーティーで破棄するつもりです(※伯爵令嬢にすぎない私から)
私だけならば、何があろうとも隠し通してみせる。
しかし殿下と私の間に子どもができ、その子にこの体質が受け継がれてしまった場合──
幼い子どもがこれを秘匿にしておくことなど、不可能だ。あっさり露呈してしまうに違いない。
となれば、私、引いてはアルナルディ伯爵家の秘密が発覚することは明白だった。
この懸念を両親が私に打ち明けてくれたのは、私が最終学年になってからのことだった。
あのときに感じた足下の大きな揺れは、今でもありありと思い出せる。
お父様とお母様は、邸の外まで見送りに出てくれた。
「クロエ、殿下に必ずお返しするんだよ」
執事が我が家にてこの3日間、厳重に保管していたものを渡してくれた。
「分かっているわ」
私はそう返事をして、馬車へと乗り込んだのだった。